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GoodLack 04-04

GoodLack
03 /01 2012
「は」

「助けに参りました、お姫様」
 羽塚はそう言って私の前に進み寄り、私を椅子に縛り付けている縄を一番に解きにかかる。その様子を私は口を開けたまま静かに見ていた。
 いや…そんな場合じゃない。
「はあああああああああああああああああ!?」
 私は縄が解けたと同時に羽塚の襟元に掴みかかっていた。

「あんた見てたの!?やっぱり見てたのね!」
 五日前のあの時、こいつの反応から見ているのではないかと思ってはいたけれども、入鹿が家に到来したり、こいつから距離を取ってみたりとそれどころではなくてすっかり忘れていた。
「はい、実は…。ですが!嬉しかったですよ!自分のことを白馬の王子様という風に見ていてくれたなんて…冥利に尽きます!」
 襟元を引かれているにも関わらず、お構いなしに私に優しい微笑みを見せる。反則だ。そんな嬉しそうな顔をされていたら怒ろうにも怒りにくいではないか…。羽塚の笑顔が眩しくて、嬉しくて、そのせいで私の顔は真っ赤になって綻んでいるだろう。喧嘩中だったって言うのにそんな顔を見せたくなくて、慌てて視線を逸らした。
「ば、ばばばば、馬鹿じゃないの!?」
「ほんっと…」
 その時、逸らした視線の先で人影が立ち上がっているのが見えた。
「馬鹿じゃねーのか!てめぇらはぁ!!」
 私の罵倒に答えたのは羽塚ではなかった。半狂乱気味のその叫びは先程まで私を辱めようとしていた男。
 そう、現在私は今この倉庫に監禁されていたのだった。
 しかし目の前の男、先程まで気持ちの悪い笑顔で私を辱めていた男なのかと疑りたくなる。笑顔など遠い恐ろしい剣幕で、服は汚れ、オールバックで固めていた頭髪は所々乱れ、当初の小奇麗といった印象はない。
 だが、不思議と恐ろしいという印象はない。先程までは、叫び、逃げ出したいほどに怖かった。現在は表情の恐ろしさまで加わっているのだが、まったく恐怖は感じない。
 それもそのはずだ。先程までとは、まったく異なっている。私の傍らには今羽塚がいるのだ。
 男の方を振り返っていた羽塚の袖を引く。それに気づいたのか羽塚は私の手をぎゅっと握ってくれた。
 もう喧嘩していたとかそういったことがどうでもよくなる。この人が側にいると、とても私は安心する。
 というか、ついさっきまで私の目の前にいたオールバックの男に取って代わって、なんで羽塚が私の隣にいるんだろう?私が目を閉じている間になにが起こったのか。
「奇襲とはやってくれるじゃねぇか」
「馬鹿はあなたの方じゃないですか?己の楽しみのために私たちの警報装置とも言える予知をカットしているだなんて下の下ですよ?」
 奇襲、目を閉じた瞬間に鳴り響いた轟音。そこで、頭上から差し込む夕方の光に気づく。上を見上げると屋根に見事な穴が開いている。加えて羽塚の身体から出る光。文字通り羽塚は飛んできたのか。いつか瓦礫に閉じ込められた所から脱出した時のように、今度は天井を破り、その勢いのままに私の前に降り立ち、この男を吹き飛ばしたのだろう。
 なんと強引な…。羽塚が少し目測を誤っていれば、私まで巻き込まれていただろう。そう思うとぞっとしないでもないが、一刻も早く駆けつけ救出しようとしてくれたということが嬉しくも思えた。
「…てめぇ、殺してやるよ。一騎の旦那がえらくてめぇのことを気にしていたが関係ねぇ!」
「一騎…?もしかしてあの男のことですか?」
 心当たりでもあるのか羽塚の目の色が変わる。
「てめぇにゃ関係ねぇよ。おい!やるぞ!!」
 男の声と共に、男の身体が羽塚と同じように光り出す。それに伴い、廃倉庫の数箇所で同様の光が灯る。監禁されていた時に所々に感じていた人の気配が光に照らされ、形になって現れる。なにかに照らされているわけではない。羽塚のものと同様に自身から発せられる光。万能の力『希望ノ羽』と同じ光に見える。
「あれって…『希望ノ羽』じゃないの?」
「はい、そうです」
 私の問いに羽塚はやけにあっさりと答えた。いやいや冗談で済ませるところじゃないだろう。
「そうです。ってそれじゃよくないでしょ!使える人はほとんどいないってことじゃなかったの!?それが1、2、3、4人も使ってるじゃない!」
 以前に聞いた話では、天界のごく一部の特に選ばれた者だけしか使用することを許されないような代物だと言っていた。地上で使用された前例もなく、こないだ羽塚が使ったのが初めてだということだったはずだ。
「諸々の事情がありまして…」
 まあ事情もなにもなければこんなことにはなっていないはずだ。私を神として迎えるということも特別な事情だろうし、羽塚に知らされてないだけで『希望ノ羽』も密かに出回っている可能性もある。私が思っているよりも、天界とは一筋縄ではいかないところなのかもしれない。
「でも、相手は4人もいるわよ…大丈夫なの?」
 光る天使たちは光量増しながら、各々羽塚を狙いやすい位置に移動していく。一斉に攻撃を加えるつもりだろう。凄まじい光量で判別しにくくはあるが、一騎と呼ばれた男はこれに加わってはいないようだ。軽く周りを見回してみてもその姿は見つからない。あの男はやはりこの男たちとどこか毛色が違うと思えたのは気のせいではないのだろうか。
「さて、どうでしょうか?一騎という男は数に含まれていないようなので、まあきっと大丈夫です。私はあなたの王子様なのですから」
「なっ!り、理由になってないわよ!?」

「なめ…てんじゃねぇぞ!!」
 相変わらず軽口を叩いている私たち、そして羽塚に一騎の取り巻き扱いされたのが気に障ったのか、男の叫びが更に増していた。
「てめぇに『希望ノ羽』の優位はねぇんだ!数の上でも圧倒的にてめぇらが不利なんだよ!」
「本当にそう思いますか?」
 その言葉と共に羽塚は私を背にし、立ち上がる。顔を上げ、オールバックの男を見据えたと思うと、場の空気が一変した。気当たりとでも言うのだろうか?空気が張り詰めていくのがわかる。
 その羽塚の重圧に男は一瞬、身を引いたが、すぐさまに羽塚を見据え、
「やれ!!」
 と号令を発した。

 三つの光が羽塚へと飛来する。人の動きとは言えない。一足でまっすぐにターゲットである羽塚へと距離を詰める。あまりのスピードのため、私にはそれを目で追うのがやっとだった。各方向から飛来する敵への警戒を呼びかけることすらもできない。
 対照的に羽塚は私の前で構えを取ったまま動かない。
 必然的に光は羽塚に激突した。
 しかし、たしかに羽塚に激突したと思った光は、それぞれの方向へ勢いを殺すことなく飛んでいく。上方から来た敵は床に転がり、左方から来た敵は壁にぶつかり、右方から来た光は倉庫にあった資材へとダイブしていった。
「なんだと!?」
 オールバックの男が一人残され、その事実に驚愕していた。
「たしかに『希望ノ羽』を持っているという優位はなくなったかもしれません。しかし、それで対等だと思いましたか?」
 再び男を見据え、羽塚が口を開く
「仮に『希望ノ羽』なしでも私はあなたたちのような非道な方々には負けはしません。それに『希望ノ羽』の使い方においても私に一日の長があるようです。さっきのような直線的な突撃では、まったく『希望ノ羽』の性能を活かせていませんよ」
 そう言い、数拍置いて羽塚は私の前から陽炎のように姿を消した。と思えば、いつのまにかオールバックの男の前に立っていた。男は驚き、慌てて身構えるが、その慌てようとは裏腹に羽塚は講釈を続ける。
「いくら『希望ノ羽』が優れていようが使用しているのは人。あなた方は私よりも劣っているのですよ」
「なめんなぁ!!」
 羽塚の迫力に耐え切れなくなったのか男は叫びと共に拳を突き出す。『希望ノ羽』の強化なのか、私の目には捉えきれないほどの速度の一撃であったが、羽塚は軽くその腕を掴み、ひねり上げていた。
「っ!!!」
「『希望ノ羽』をデフォルトで使用しているならば、神経系も強化してあるはずです。感覚は鋭敏になり、あらゆる物事に対応できるようになりますが、痛覚もより鋭敏になっているでしょう」
 腕をひねり上げているだけで尋常じゃない痛がりようだ。ぎりぎりという音が聞こえてきそうだ。それでも羽塚は手を離す気配はないらしい。
「よくも希望さんにひどいことをしてくれましたね…」
 腕を男の背中に回し、身動きの取れないようにする。羽塚が男の背後に回ったので、自然と羽塚と目が合った。と思ったら、羽塚は途端に顔を赤くして目を逸らす。どうしたんだろう?と考えてみると、身体の前面をはだけているのを思い出し、慌てて腕で覆い隠した。どこか気まずい空気が流れてしまう。
「はは、あんたら相当初心だな!」
「軽口を叩くな」
 羽塚は更にひねり上げるのを強くしたらしく、男は叫びを上げて膝を屈する。その耳元に羽塚は口を近づけ呟く。
「こんなもので済むと思うなよ?」
 その時だった。

「きゃあ!」
 背後から腕を掴まれ、身体を拘束される。
「はははは!形勢逆転だな!」
 床に倒され押さえ込まれ、身動きが取れない。目の前にいた男のように腕をひねり上げられている。その痛さを身をもって知ることになるとは…。彼の喜びようからどうやら羽塚が敵を仕留め損ねていたのだろう。さっきから羽塚に迷惑をかけてばかりの自分がいやになる。
 辛うじて顔だけ上げ、羽塚の方を見ると、思っていることが一目でわかるぐらいにしまったという顔をしていた。これは私のことはいいから早く敵を倒しなさい!と言っても絶対聞かないだろうことは容易に想像できる。
「離してくれるかな?」
 もうこうなってしまったらどうにも手詰まりだ。
「羽塚、ダメよ!」
 本当に私に構わず倒してしまってほしいと思う。私のために羽塚が傷つくことはない。でも羽塚は絶対に私を見捨てない。
 羽塚は悔しそうに歯噛みをする。
「約束しろ!私はどうなっても構わない!でも希望さんには手を出すな!」
「ああ、約束しようじゃないか」
 予想通りに羽塚が男の拘束を解こうとしたその時、頭上でバキッと乾いた音が響いた。同時に身体の拘束が解ける。
「な!?一騎の旦那ぁ!なにしてくれて、ぐぁ…」
 オールバックの男の叫びも待たず、羽塚が素早く動き、男の意識を奪う。男はその場で崩れ落ちた。
「胸糞の悪い任務ご苦労だった。しばらく寝ていろ」
 そう殴りつけた男に吐きつけ、私を立ち上がらせ、羽塚の方へと押し付ける。それを羽塚は優しく抱きとめてくれた。

「助けて…くれたのですか?」
「いや?ただ余りに醜いやり方に見ていられなくなっただけだ。こいつはおまえの約束なんぞ守る気はない。どうせそうなった時、おまえは簡単にお嬢さん助けてしまうだろう?時間の無駄だ」
 そう言うと一騎という男は木刀を斜に構える。木刀は一騎がグリップしたところから徐々に光を纏っていく。
「目的は変わらんよ。お嬢さんには羽塚を完全にねじ伏せた光景を見せて、絶望してから死んでもらうのがいいと思っただけだ」
「そうですか…。あなたは話が出来る人と思いましたが、なかなか頑なですね…。では仕方がありません。あなたを倒し、希望さんは助け出させていただきます。あなたほどの腕の方を倒せば、希望さんを狙おうとも思わなくなるでしょうから…」
「ああ、そうだな。おれ以上の使い手は周りにはいない。お嬢さんも狙われにくくはなるだろう」
 光が木刀を覆うと木刀に染み込むようにして光は消えた。一騎は身体の前にそれを構え羽塚に向き直る。羽塚の指示で私は後ろに下がった。オールバックの男もしっかり気絶していた。
「まあそれができたらの話だがな」
「やってみせます。希望さんをこれ以上の危険に晒したくないですからね」
 二人の間を緊迫の空気が包む。
 区間ごと見放された廃倉庫は恐ろしく静かだ。
 そんな中どこか遠くの方で烏の泣き声が響く。
 それを口火とし、両者同時に踏み込み、羽塚と一騎と言う男の戦端が開かれたのだった。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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