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正義のヒーロー英雄

SS
01 /07 2009
 子供の頃から正義のヒーローには憧れていた。今でさえ、そういう特撮ものをやっていると思わず、見てしまう。
昔は正義のヒーローというものを信じていた。ただ年齢を重ねるにつれ、現実にはそんなものは存在しないと理解していた。

それが、今妙とも言える。現実に直面していた。

学校への通学路途中、そこで正義のヒーローに出会った。
その姿は特撮戦隊もので見るような真っ赤なレンジャースーツを身に纏っていて、いかにも、な怪物の前で決めポーズをとっていた。
その戦いはあっさりと終わった。ヒーローは持っていたビーム銃で敵を打ちまくり、敵の外装が剥がれかかった体にビームサーベルで以て『ビィィーーム!サァーブェル!』と、妙にアクセントの聞いた掛け声と共に怪物を一刀両断して見せた。すると、怪物は派手に爆発。粉々になって、灰になった。

でもって、今はこんな状況である。

正義1

「まったくやってらんねぇよ。仕事場ついた瞬間だぜ?」
怪物を倒して、帰ろうとしていた赤レンジャーを僕は呼び止めた。彼は意外にもあっさりと止まって、変身を解き、僕が聞こうともしないことを近くの公園でべらべらと話し始めた。
「正義のヒーローつったら聞こえはいいけど、それじゃ食っていけねぇって言うのに、仕事無断欠勤させられるとかたまったもんじゃねぇ、なぁ?」
彼は無断欠勤とは言うけども、今から行けば、遅刻で住むんじゃないかとは言わなかった。
「じゃあなんで正義のヒーローやってるんですか?」
そう質問すると彼は少し、考えて、考えて、考えて、
「なんでだろうな?」
と答えた。
 それからもしばらくの間、彼は愚痴を言って、そのまま自分から今日は疲れたから会社サボって寝ると残して、去って行った。今、考えてみると僕の呼びかけに振り返ってくれたのは、愚痴が言いたかっただけかもしれない。
 それから大分遅れてだけど僕は学校に行った。


 その日の授業は上の空だった。正直ヒーローがあんなのだったのに、幻滅したとか、憧れが失われてしまったとかじゃなくて、ヒーローが実在するということに僕の心は、穏やかでなかった。子供のころはただ憧れるだけではなく、なりたいとも思っていた。ただ現実問題、ひとつ、子供ながらに気づいたことがあった。怪物の異常性だ。元々勇敢な性質でない僕は、テレビを見ながらそんなことを冷静に分析してしまっていた。あんな堅そうな甲殻に鋭い爪、普通に戦って、倒せるわけがない。戦隊ものヒーローが着てるレンジャースーツはどれだけ高性能なのか、そうでなければ、どうにも対抗することはできないだろう。そんな点を考えたりしているうちにありえない存在だと自覚していったのだが、それが存在していたということだ。心穏やかではいられない。
 そんなこんなと色々と、考えてるうちに授業は全て終わっていた。大幅に遅刻したことを教師に職員室に呼び出され、咎められ、少し帰る時間が遅くなったが、他のことを考えられない空虚的な一日はあっというまに過ぎていっていた。
 一般生とも、部活生とも時間のずれた帰り道で一人、また朝の正義のヒーローのことを思う。
にしてもあの正義のヒーローは怪物が怖くはないのだろうか?彼の話を聞いていると、自分では望んでないのに仕方なく怪物を倒しているようなそんな感じさえした。それなのになぜ彼は、仕方なくも、正義のヒーローをしているのだろうか?
そう思って僕は朝、彼に質問したのだけど、彼は『なんでだろうな?』と返事をしただけだった。

そんな疑問を頭によぎらせながら帰路を歩いているとまたしても妙な状況に遭遇してしまった。

朝に見た怪物よりもさらに分厚い甲殻を纏った、眼のぎょろりとした怪物が曲がり角を曲がった先に佇んでいた。
僕は反射的に帰路を逆走する。
怪物の持つ鈍く光った鎌のような腕、ぎょろりと光る眼、それは耐えようのない恐怖の象徴として僕の胸を襲っていた。必死に走る僕は、バクバクと鼓動を打つ心臓の動悸は、走りから来るものなのか、恐怖からくるものなのかよくわからなかった。
あんなのに正気で立ち向かえるわけがない。ということは今朝あった正義のヒーローは正気ではないことになる。仕方なしにあんな怪物を倒してるなんて、実際、正気の沙汰じゃない。
僕は逃げていたつもりだったけど、まったく逃げれていなかった。怪物は鈍重そうな体に見えて、恐ろしい跳躍力を持っていた。逃げる先々に回り込まれる。正直、体力も限界で、その上、どこに逃げても駄目だという絶望感から僕は足を止めた。
獲物が観念したのを見たのか怪物はゆっくりと歩み寄ってくる。近くに来ると、僕の身長よりかなりでかく、腕の鎌の恐ろしさも際立った。甲殻が二つに割れ、牙が表れ、僕の体を包み込もうと覆いかぶさってくる。

 そのとき、今朝のヒーローが空中から現れた。
「正義ぃぃキィィーーーック!!」
無駄なアクセントの効いたその叫び声がヒーローの足と共に怪物の側面に突き刺さる。怪物は甲殻を半開きにしたまま、僕の前から吹っ飛んだ。そして、僕の目の前には怪物の代わりに正義のヒーローが決めポーズを決めて立っていた。
「寝てたんじゃなかったんですか!?」
普通、助けてくれてありがとうじゃないかと自分自身に疑問を持ちながらも咄嗟にそんな言葉が出てしまった。
「ああん?よく見たら今朝の高校生じゃねぇか?」
振り返り、マスクごしに僕を見る正義のヒーロー。
「眠いが寝てられるかっつーの、あぶねぇだろうがこんなのほっといたらよ。」
そう言って腰のホルダーからビーム銃を取り出し、怪物に向かって撃ちまくる。
 けれどもその攻撃に怪物はひるむ様子がなかった。
「げ、ビームがきかねぇ!」
怯む正義のヒーローに向かって、怪物は炎を噴き出した。それは背後にいる僕も軽く包んでしまう様な炎だった。回避動作に入っていたヒーローはそれに気づいたのか、回避動作をやめ、僕の方に体を向け、そのまま僕を炎の有効範囲から突き飛ばした。
結果、正義のヒーローは炎に包まれた。
その炎はヒーローに纏わりつき、ヒーローは地面を転げまわった。そして、炎が自然に消える頃にはヒーローは動かなくなっていた。
 僕はなにが起こったのか理解できなかった。
ヒーローが僕をかばって動かなくなった。その事実が目の前に広がっていた。
怪物が動かなくなったヒーローの元にのっそりと歩み寄る。今では僕に目もくれずに自分を攻撃した相手の元へと近づいていった。その相手の目前で怪物はさっき僕にやったように甲殻を開く。

僕は正義のヒーローになりたかった。
けれどもそんなものにはなれないとあきらめていた。

彼は正義のヒーローだった。
口は悪くて、あっさりと怪物に負けてしまったけれども、危険な怪物を倒そうとし、か弱い人を助けようとする。人々が危ないときは仕事も途中で放り出してきて、駆けつけて、どうしようもなく正義のヒーローだった。

僕もそんな正義のヒーローになりたい。

「こっちを向け!」
ヒーローが効かないとわかって放り投げたビーム銃を僕は拾い、叫んだ。その声に反応して怪物はこっちを向いた。
震える指先に力を込め、怪物の開いた甲殻の間を狙って、ビームを撃ち込む。それに怪物は大いに怯んだ。そして、僕は怪物をヒーローから引き放そうと前に出る。鎌の腕は怖かったけれども、もっと怖いことが他にあったから我慢できた。
怪物の体を押す。自分では信じられないぐらいの力が出て、怪物は大きく後ろに吹き飛んだ。
いつのまにか僕はこの正義の赤レンジャーと同じ、いや、色が青のレンジャースーツを着ていた。

「よし!でかしたぞ!」
声のする方を振り返れば、いつのまにか赤レンジャーが立ち上がっており、ビームサーベルを握っていた。
 そして、転倒している怪物の甲殻の隙間にそれを差し込み、
「ビィィーームサァーブェル!!」
という叫びと共に怪物を引き裂いた。
ドーンという爆音とともに怪物は灰になった。

正義2

「やられたんじゃなかったんですか?」
重傷だと思っていた正義のヒーローに僕は問いかける。
「いや、炎で酸欠になって意識失ってた。にしてもブルーよくやってくれた。」
そう言われて僕は再び自分の姿を確かめる。見事なまでに真っ青だ。
「これって・・・どういうことなんでしょう?」
「さあ?おまえも正義のヒーローだったってことじゃないの?まあおれの危ないところを助けてくれたから正義のヒーローってことでいいんじゃないの?」
「僕が正義のヒーロー・・・?」
「まあこれからよろしくな。」
といってレッドは踵を返す。
「え?ちょっとどこへ?」
「ん?いや帰って寝るんだけど。」
「え、いや、これ・・・どうすれば?」
「あー自分の意志で変身解除はできるよ。怪物探知は自分の意志じゃなくてもされるけど。」
といってレッドは変身を解く。僕もちょっと考える、というか念じるだけで青のレンジャースーツの変身を解くことができた。
「まあ・・・がんばんなよ。この仕事結構大変だから。」
そう言い残してレッドはあっさりと帰って行った。

 妙なことが起こった。
ある日、僕は正義のヒーローになってしまった。

挿絵:兜
文:崎原
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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