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GoodLack 03-03

GoodLack
06 /01 2011
「やってきました、夢の国!」

 いち早くゲートを越えた悟子が入鹿の手をすっと引き、入場を促す。まるで王子様気分とでも言ったところだ。さすが本日の主催様と言ったところだが、どうにも当遊園地の方はそこまで夢の国ムードを漂わせる気はないらしい。今日は世間一般で言う祝休日というわけではなく、毎日大規模な催しものをやっている大型遊園地とは様相が違う。まあ人が少なくて色々な乗り物に乗るのには絶好の日程だが、入鹿には人がいっぱいの遊園地っていうのを味合わせてあげたかった気もする。

 しかし、当の本人はそんな細かいこと関係ないらしく、頭上に走るジェットコースターのレールや遠くの観覧車を見て、感嘆の声をあげていた。純粋というか、まあ実際に初めてなのだから純粋もなにもないが、その様はとても可愛らしかった。後から入場してきた羽塚も入鹿のその可愛らしい顔を目撃したらしく、にこにこと笑顔を浮かべていた。

「ほら、あんた腕でも貸して、エスコートしてあげなさいよ。」
「ああ、はい。しかし…」
「いーからいきなさい。」

 羽塚の背を押して、入鹿の元へと押し出す。一度羽塚はこちらを振り返ったがすぐに入鹿に腕を組まれ、パンフレットを見せられて、何に乗りたいですかーなど質問攻めにあっていた。そのもう片方の腕にはさりげなく悟子が引っ付いていた。そういえば悟子とも遊園地に行ったことがなかった。色んな男とデートでもして行っているかと思えば、こいつも久しぶりの遊園地なんだろうか、どことなくはしゃいだ雰囲気を感じる。普段からテンション高めだから別段高すぎって感じもないが、なんとなくいつもと違うのがわかる。ただ、おまえには羽塚の片側は許してない!と言ってやりたいところだが、生憎そんな彼女たちに合わせて、はしゃいでいられる心境じゃない。

「入鹿ちゃんはなに乗りたいの?」

 悟子の入鹿への質問の背後で、意識せず力が入ってしまう。

「えーっと…やっぱりじぇっとこーすたーですかね?」

 早速来たかと、内心落ち着かないのを必死に隠し、平静を装う。遊園地に行こうと提案があった日には、たしかに気持ちの持ちようだと、そう思っていた。しかし、日取りが決まり、今日という日が近づくにつれ、幼い頃の恐ろしい記憶が鮮明に思い出されるのだ。

 初めて乗ったジェットコースターは、国内でも有数の絶叫マシーンのひとつだった。
 幼い頃からスリルのあるもの、地に足のつかないものは見るからに恐ろしく嫌いだった、が友人の付き合いでどうしても乗らざるを得なかったことがあったのだ。まあ仕方ない、と思って乗ったそれが最悪だった。固定具がほとんど体を締め付けないまま、発車してしまったのだ。もうその時は、コースターから振り落とされないことに必死だった。やっとの思いで終着した時には、安堵からか全身の力が抜け、意識を失ってしまっていた。思えば、そんな出来事も私の不幸の一端だったのかも知れない。あの時、二度とこんな恐ろしいものに乗るものかと心に決めたものだった。

 頭上を、ゴゥという風を切る音と共にわー、キャー等の歓声が少ないながらも聞こえてくる。
 よくもまあ、あんな恐ろしいものを楽しめるものだ。周りにいる人、皆が異常に思えてしまう。

「んじゃ、早速レッツゴー!」

 だが、そうも言ってはいられない。今日は入鹿を精一杯楽しませてやろうと言う計画だ。いきなり水を差すようでは、計画を立てるのに協力してもらった悟子にも申し訳が立たない。大丈夫、あの頃からどれだけの月日が流れたと思っている。羽塚の「希望ノ羽」の時も実際に空を飛んだのに別に平気だったんだ。気持ちだ、気持ち次第でなんとでもなるはずなんだ!

 そんなことを考えている間に、乗り場についていた。お客がそんなに多くないので、並ぶこともなく、あっという間だったのだ。しかもよりによって、最前列から空いているらしい。「私、前に乗ってみたいです!」と「あ、私も前がいいわ!」の二言で、二列の座席だったので、最前列になるという緊急事態は回避できたらしい。

 間もなく、コースターは発車する。
 前に悟子、右隣には羽塚、斜め前には入鹿という席順。
 今回は固定具もしっかり体についているし、足元もちゃんとある。
 こんな乗り物、速いだけ、風が強く当たるだけ、重力が強くかかるだけだ。
 ほんの数分我慢すれば終わる。いや、もう我慢とかそう考えてる時点でダメなんだ。楽しもう。みんなこれが楽しいっていうんだ。私もそう思えば…。

『足元はずれまーす、ご注意ください。』
「え」
「いよいよですねー」
「どんとこーい!」

 いや、そんな場合じゃないでしょう?足元なくなったのよ?

『では、発車しまーす。』

 このまま?大丈夫なの?あ、発車した?
 最初ゆっくりなのよね?上に上がるまでは大丈夫なはずよね?今のうち、今のうちに!
 あれ?なんなんだっけ!?

「大丈夫ですか?希望さん?」

 羽塚の声。
 隣から羽塚が手を握ってくれていた。でも…

「むっ、むり、むむ、むり…」

 羽塚に向けて首をぶんぶん左右に振る。
 ガコンとなにかが外れる音が聞こえる。
 いつのまに頂点に来ていたのか、急降下が始まる。

「むぅぅぅりぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 コースターの加速と共に私の叫びが園内に木霊したのだった。
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コメント

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No title

先生、5月の更新はどうしたんですか?

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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