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GoodLack 03-02

GoodLack
04 /07 2011
「あ、希望さーん!」

 自分よりいち早く希望さんを見つけた三橋様が視線の先に手を振る。その向かう先を追って見つけた希望さんは唇を尖らせ、目を細め、こちらを見ていた。少しの間をおいて、ゆっくりとこちらに歩み寄り、私を見上げて、
「なにしてんの?」
 と腰に手を当て、呆れたように問いかけた。
「なにってお迎えに…。」
 ふぅと希望さんは溜息をつき、見ていられないというように目を伏せる。
「別に迎えになんてこなくてよかったのに。」
「いえ、朝から出かけていましたし、時間も頃合かなと言うことで…」
「ああもう!あんたがそうでも入鹿は違うかも知れないでしょ?もっと女性の気持ちを優先してエスコートしたの?夕食とか二人で夜景の見えるレストランで食べてきてもよかったのに。」
 「あんただめねぇ」と首をふるふると振りながらダメ出しをされる。実際、三橋様と二人きりで夕食だなんてとんでもないことなので、自分のダメっぷりには頷かざるをえないだろう。
「まあこういうのは、あんたに説教するよりも本人にどうだったか聞かないとダメよね…、入鹿。」
 そう言って希望さんは三橋様に視線を向ける。その眼差しはとても優しい、穏やかなものだった。
「楽しかった?ちゃんと満足いくようにエスコートしてもらえた?」
「うふふ、楽しかったですよー。羽塚さんに案内おねがいしてよかったですー。」
 問いかけに対して、三橋様は満面の笑みで応えた。
 正直、ちゃんとエスコートできたか心配していたのもあって、安堵の息がでそうになる。がしかし、希望さんの手前、気の緩みを見せてはいけないと思い、はきそうになった息を呑み込む。
 希望さんは、その必死の取り繕いに気づくこともなく、三橋様に笑みを返す。
「ふふ、よかったわね。」
 どこか肩透かしを食らったような気分だった。
 別に端から見れば、どうということはないやりとりなのだが、いつもの絡みと言うか、返しが今ひとつな気がしてならない。

「んー…別に今からでも二人で夕食食べに行ってもいいのよ?私は自分でなんとかするし。」
「いえー今日は羽塚さんの作られたお夕食をいただこうかと思いまして。ですよね、羽塚さん?」
「はい、昼時にそのような約束をいたしましたので。」
 朝から出かけていたので、昼食は外で摂った。その時に、三橋様に「夜は羽塚さんが作ったものが食べたい」と言われたのだ。別に期待させるほどの腕はないと恐縮するのだが、それでも羽塚さんの料理が食べたいんですと押し切られてしまった。
 昼のことを思い出して気づいたのだが、その時に「夕方は希望さんを迎えにいって三人で夕食を食べよう」と、三橋様も同意の上で予定していた。今、希望さんを迎えに来て、説教をいただくほどのことでもない。それに、少々天邪鬼だが、根は素直な希望さんだ。むしろ迎えに来てくれたことを照れながらも喜ばれるのではないかと思っていた。それだけにさっきのリアクションは意外さを感じた。

「まあそれなら仕方ないわね、帰りましょ。」
 そう言って希望さんは率先して歩き出す。
 やはりどこか違和感を感じる。口から出る言葉はいつもの気丈な希望さんのものであるはずなのに、端々の動作や態度がいつもとは異なる。現にいつもは隣を歩いてくれる希望さんが私と三橋様の前を歩く。三橋様が隣を歩いているから、というのもあるが、いつも隣を歩いてくれる人が、少し違う位置にいるだけで、こうも寂しく感じるなんて、正直どうかと思う。
 いやまあ、両手に花じゃなくて残念だとかそういうことではなくて…。

「ああ、そうだ。今度の私の休みの日、まだ予定入れないでおいてね?悟子も含めてどっか遊びに連れて行こうと思ってるんだ。」
「わあ!ほんとですか!?是非にご一緒いたしましょう!」
 にしても三橋様の喜ぶ姿は華がある。今日一日エスコートしたのだが、些細なことにもお喜びになられて、随分私はいい想いをさせてもらったと思う。地上有事二課の仲間に話したらさぞ羨まれることだろう。
 …いや、話さないでおこう。どんな憎しみの篭った制裁を受けるかわからない。
 そもそも三橋様の休暇は天界ではどのように伝わっているのだろうか?なるべく広まっていなければいいのだが…。休暇のエスコートに直々の指名というのは、伝わり方によっては全天界男性の羨望というより憎悪の対象にされてしまいそうだ。今度それとなくどういった経緯で休暇をとったのか聞いておこう。
「場所なんだけど、いまいち決めかねてるんだけど、どっか希望はない?」
「そうですねぇ…」と悩んでいる姿もまた…いや、やめておこう。どうにも非生産的だ。

「あ!」
 三橋様は過去に目が見えず、やりたいことも思うようにできなかった。
 前々から行ってみたい所、やってみたいことはあったことだろう。
「遊園地に行ってみたいです!」

 遊園地…。ん?そういえば希望さんとは行ったことないような。
 一度デートと言えば、遊園地でしょうと言って、行こうと誘った気がするのだが、なにか理由があって断られたような…。
「絶叫マシンというものに乗ってみたかったんです!」
 そう。絶叫マシン。あれが嫌いだから行かないと言われたんだ。
 過去に一度、「希望の羽」で空を飛んだ際、急上昇に急降下したことがあり、あの時は怖がっていたのかと反省したのを思い出す。
 遊園地そのものを嫌うのは、希望さん曰く、行っておいて乗れないものがあるのは悔しいから嫌いだと言っていた。三橋様には残念だが、違うところになるだろう。
 あの時は頑なだったからなぁ…まあ、三橋様は色々な行きたいところがあるみたいだし、わざわざ希望さんの嫌がるところを選ぶことはしないだろう。

「ああ、いいわね。行きましょう。」
「え?」
 あれ?遊園地に行く?こんなあっさり?
「絶叫マシンですよ?ジェットコースターですよ、フリーフォールですよ?」
「いいんじゃない?」
「前に嫌いって言ってたじゃないですか!?」
 絶対にそう言っていた。自分にしては結構食い下がって、それでも嫌だって言われて、遊園地デートに誘えず、実はかなり落ち込んだんですよ私!
「大丈夫よ。気持ちの持ち様でしょ?要は。」

 違う。
 今日の希望さんは確実にいつもと違う。
 観衆の目線と言うか、一歩引いた位置にいる。
 自分に言わせてみれば、腑抜けていると言うか、本当に希望さん本人と話しているのか不安になる。

 いつものように食って掛からない。
 いつものように隣を歩いてくれない。
 いつものように目を合わせてくれない。
 いつものように意地を張らない。

 いつものようにフォローをいれないでいい。
 いつものように並んで帰れない。
 いつものように気持ちがわからない。
 いつものように守らなくていい。

 まるで張り合いがない。
 いつもと違うことがこんなにも自分の居場所を不安定にしてしまうとは、正直思ってもみないことだった。

 しかし、希望さんは三橋様に対して、昨日までの敵対心丸出しの状況でなく、すごく和やかで優しく接するようになった。

 これは、自分自身で望んだこと。
 三橋様と仲良くなって欲しいと思い、三橋様のことを話した。
 希望さんならわかってくれると思い、実際こんなにも真摯で慈愛に満ちた態度で三橋様に接してくれている。
 全然悪いことではないし、自分の望んだ通りになってくれた。

 それ故に、「いつもの希望さんがいい」とは言い出せなかったし、言うこともないだろう。
 別に、この状況は自分が少しだけ我慢をすればいいだけなのだから。
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コメント

非公開コメント

No title

先生今回はいったい何があったんですか!?
いつもより若干長い!

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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