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GoodLack 01-04

GoodLack
07 /12 2010
 人とは不思議なもので、人を分別してしまう。
 極端に言えば、好きと、嫌い。
 ここでは、好きになる理由は置いておくとして、嫌いになる理由について二つ。
 一つは、自身にひどく似通った存在であること。
 もう一つは、自身とは遠くかけ離れた存在であること。
 前者は、自身に似ていることで、ふと垣間見てしまう自身に対しての嫌悪感。
 後者は、自身にはないものを持っているために生まれる嫉み。
 私が、あの女を嫌う理由は、後者である。
 今までほとんど、他人との交流関係を断っていて、意識したことはなかったが、私は、嫉みの深いほうだったらしい。

「あーん。」

 目の前の女の甘い声。それに抵抗はするが、照れながらも、どこか嬉しがっている雰囲気を私に見せ付けてくれる、その隣の男。まあ、それも仕方ないと言える。目の前の女は、モデル並の体型であり、スタイル抜群。それに加えて、性格までも素晴らしい。そんな女性からの「あーん」攻撃だ。それを無視する、また意識しないっていうのは、男が廃るってものだ。それにその素晴らしい女性は、羽塚の上司である。やつもやつなりの接待と言うものがあるのだろう。ここは、何も言わず、そして、見て見ぬ振りをしてやるのが、余裕のある女ではないだろうか。そもそも私はこの場に、飲みを楽しみに来たわけで、こんな甘ったるいやりとりを観賞しにきたわけではない。私は私で勝手にやらせてもらおう。
 悟子にグラスを突き出し、酒を注げと促す。

「何ニヤニヤしてんのよ?」

 飲みの席にしては、さっきから妙に静かだなと思われるこの女、嫌にニヤニヤした表情を私に見せている。

「いやさー、希望もなにかアプローチしないのかなーと思って。」
「はあ?何言ってんのよ?ほら、さっさと注ぎなさいよ。」

 何をアプローチしろと言うのか。だいたいアプローチって言うのは、人の気を惹くための行為。そんなことを今、誰にするのか。必要性を感じない。仮に、もし仮に、三橋さんと同じように、羽塚の気を惹くための行動をするとなると、あんなの恥ずかしくてできるものか。

「あ、創一さん。グラス空いてますよ。」

 三橋さんが羽塚に酌をすると言う。もうすでに接待をしているのかされているのか。たしかに悟子の言うように、三橋さんの行動はアプローチと言うのにふさわしい。羽塚も恐縮です、と言い、またも少し照れながらグラスを構える。最初、彼女に会ったときの緊張はどこに行ったのか、お酒の力とは恐ろしい。
 三橋さんは、グラスにお酒を注ぐために、ぐぐっと羽塚の方に身体を近づける。そりゃもうやりすぎってぐらいに。そんなに近づいたら、ほら、胸とか当たっちゃってるじゃないですか。
 そのことを言い出せない羽塚は、密かに喜ぶ、どころか、むしろ冷や汗をかいて、青ざめている。こういうのには慣れていないのだろう。お酒の注がれたグラスをガタガタと震える手で、一気に飲み干している。結構濃度の高いお酒なのだが、なかなかにやるものだ。

「わぁ!創一さんすごいです!次もどうぞ、どうぞー。」

 そう言って、さらにお酒を注ぎ、羽塚から離れようとしない。そうだ、これは正しく、女性専用の究極奥義、「当たってるんじゃないの、当ててんのよ!」だ。羽塚に意識させるほどの質感を持っているとは、見た目どおり、いいものを持っているようだ。「どうせ私にはないわよ…」と心の中で悪態をついてみる。

「悟子、注ぐわよ。」
「あ、ちょっと待って、まだグラス空けてないの。」
「それなら私のに注ぎなさい。」

 ぐいっと半分ぐらい残ってたお酒を一気に飲み干し、悟子にグラスを突き出す。

「はやっ!あんたそんなに強くないでしょ、もっとゆっくり飲みなさいよ。」
「もううるさいわね…いーから注ぎなさい!」
「まあ、気持ちもわからないでもないけどね…。」
「なにがよ?」
「なんでも。」

 そう言って悟子は小首を傾げ、お酒を浪波と注いでくれた。いつもは楽しい飲みの席が、どこかおもしろくない。きっと、それはまだ酔い切れてないからだ。酔ってしまえば、気持ちよくなって、自然と楽しくなるだろう。そうであると、自分の中で自己完結し、飲むペースを上げた。

 もう随分時間が経ったように思えるが、時計の針を見てみると、ほんの10分程しか経過していない。

「ちょっと熱くなってきましたね。」

 と言って、依然、羽塚と甘々な雰囲気を出していた三橋が上着を脱ぎ始める。んっ…と悩ましげな吐息を吐きながら、窮屈気に服を脱ぐ様子は、やけに艶かしかった。服の下は随分と薄着で、プロポーションのいい肢体を強調させる。出るとこはしっかり出てて、引くとこもしっかり引いてるその体型は、女性ならだれもが憧れるものだ。 もちろん、男性もそれに夢を抱くわけで、羽塚の視線が、三橋に釘付けになっている。

「わたひも熱くなってきたなーっと!」

 なぜか羽塚に聞こえるような、大きめな声で言ってしまう。それで上着を脱ぐが、視線は奪えなかった。次は襟元を緩め、前かがみになり、胸元をパタパタと仰ぎ、じっと羽塚に視線を送る。こいつの位置からなら、普段なら見えない、服の「むこうがわ」というものが見えているはずである。これで、視線を奪われない男はいないはず。さあ、私の方だけを見なさい!って少しもこっちを見ない、気づいてすらない。偶然なのか、狙ってなのか、三橋も私と同じ動作をしていた。そちらの方に視線は釘付けだった。やはりボリュームこそが命なのか…。世の理に呆然としていると、三橋と目が合う。何事もなかったように、私に微笑みを見せる。余裕見せやがって。舌打ちをなんとか堪え、普通に上着を脱ぎ、床に座り直す。酔っていて、寒くはないのが幸いだった。羽塚も少し酔い始めているみたいで、照れを隠し切れないニヤけた顔が情けなかった。

 さらに10分が経過する。

 また三橋が事を起こす。

「私ぃー、ちょっと酔っちゃったなぁー…」

 甘えた声を出し、身体を羽塚に預け、肩に指先でうりうりと円を描く。顔と顔が近い。私は、グラスに入ってる酒を飲み干す。ガンとテーブルにグラスを置き、立ち上がり、羽塚の側にズンズン歩き、三橋とは逆側に正座で座る。

「わらひも酔っらのぉーーーー!!」

 三橋から奪い取るような形で、羽塚に抱きつく。
 ふん、これが羽塚の彼女である特権。

「私もですー。」

 しかし、あろうことか、三橋まで抱きついてきた。羽塚を挟んで眼を飛ばすが、相変わらずの微笑みで、ナチュラルに受け流す。

「離ひらさいよぅー、羽塚はわらひのらのぉー!!」

 羽塚をバシバシ叩いて威嚇する。すぐ近くから痛いと聞こえるが、これは、天誅である。
 それにひるむ様子もなく、三橋は反論してくる。

「羽塚さんは羽塚さんのですよー、だれのでもないはずですー。」

 実に正論。

「れもれもーっ!羽塚はわらひのらのぉー!!」
「じゃあなんで希望さんのものなんです?」

「そ、それわ…好きらから…。」
「それなら私もですね。」
「何言ってんろよ!?こんらののどこが好きらっていうのにょ!?」

 おまえが言うなとどこからか聞こえた気がする。

「どこってー、羽塚さんかっこいいじゃないですかー!頼もしいし、優しい。真面目だし、あ、それといじめた時の反応もかわいい所も捨てがたいですねー。」

 まったく三橋の言うとおりだ。いいセンスをしている。出会い方さえ違えば、いい友人になれたかもしれない。

「むぅぅー…ぅううーっ…!!」

 駄々をこねるように、羽塚にぎゅっと抱きつく。

「ほら、いいかげんにして…、離してください。」

 そう言い、羽塚は難なく”先に”私を引き剥がし、次に三橋をなだめ、離れてもらう。

「え……。」

 なぜか、その特になんでもないことに私は茫然と座り込んでしまった。
 急激に頭から血の気が引いていく。

「羽塚…、そんなにその女がいいの…?」

「そんなことないですよ…。子どもじゃないですから、聞き分けてください…。」

 なぜ、この時、こんなに激しい気持ちになったか、わからない。

「あんた、私の彼氏でしょ!?」

 ただ単純に、悔しかった。
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コメント

非公開コメント

No title

そこで切るのかよぉ!!

修羅場の続きはいつですか

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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