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GoodLack 01-02

GoodLack
05 /03 2010
 数分前…。

「おっさけー♪おっさけー♪おっさけーがわったしーをヨンデイルー♪」

 夕暮れ時、鐘ヶ江宅のアパートも目と鼻の先、自分作詞作曲のいびつな音程の歌を誰かに聞かれても気にしない。なんてたって、これからお酒が飲めるのだ。テンションもさっきから上がりっぱなしだ。目の前の四つ角を左に曲がり、三番目。そのアパートの302号室が鐘ヶ江 希望と羽塚 創一の愛の巣。二人がどういう関係なのかを、希望が口を割らないから断定はできないが、絶対にそういうもんだと私は決め付けている。不幸少女がいっぱしに男を作って、同棲だなんて、随分と成長したもんだ。
 これはもう祝福の酒盛りをしてやるしかないだろうと、足もはやる。あとはこの階段を登るのみ…ん?いつもの見慣れた風景になにか違和感を感じた。なんだろうと階段下を見下ろすと、そこはゴミ捨て場。その陰気な雰囲気とは、まったく逆の見目麗しい美女が座り込んでいるではないか。うん、美女。まごうことなき美女。胸もでかい。

「えーっと…あなたそこでなにしてるの?」

 カンカンと登りかけた階段を降り、その美女の隣に座り込む。
 美女の視線の先を追うと、そこでは野良猫がゴミを漁っていた。

「はい?」

 隣に座られたことでやっと私の存在に気づいたのか、ゆっくりとこっちを向く。眩しいほどの笑顔に少し、身じろぎしてしまった。

「いや、なにしてるのかなーって…猫、見てたの?」

「はい、珍しくって、つい…。」

 そう言うと、また、ぽーっと猫の甲斐甲斐しい姿を見つめだす。別に珍しくもないどこにでもあるような風景だが、まあ、確かにかわいらしくて、見つめていたくなる。
 しばらく、謎の美女に釣られて、野良猫の観察と洒落込んでいたら、

「あ、そうじゃありませんでしたー。」

 となにかを思い出したような、間の抜けた声を聞かせてくれた。顔の前でぽんと手を合わせた、そんな何気ない仕草でも品格が感じられた。
 どこかのお嬢さんかなにかだろうか?見た目は私よりも年上そうだが…。

「私、迷ってたんです。少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「あら、私でわかる範囲ならお教えしますよ?」

 道に迷っているのに、猫観察とは呑気だなーと思いつつも、どこか放っておけない雰囲気に、二つ返事で返す。

「ここに行きたいのですけど…、わかります?」

 差し出された地図を受け取り、美女が指し示した目的地を見る。

「え?ここ?」

「はい、そうです。」

「この目的地ってアパートよね?」

「はい、そこの302号室に行こうと…。」

「ここなんだけど…。」

 今、私が入ろうとしていたアパートを指で示す。

「はい?ここですか?」

「うん、そう。」

「あら。」

あらあらあらと驚いている様子だ。ここに来るまで大分迷ってきたようだ。

「302号室よね?私も同じとこに用があるみたいなんだけど…」

 おまけに行こうとしている部屋も同じだと言う。

「あらあら、うふふふふ…。私たちなにか縁がありますね。」

 両の手をぎゅっと握られ、微笑みを投げかけられる。華がある微笑みだ。色々とツッコミを入れたいところではあるが、この微笑みを向けられると、どこかその気力も失せる。緩いというか間が延びているいうか不思議な雰囲気をもっている。

「んじゃま…いっしょに行きます?」

「はいー、よろしくおねがいします。」

 並び、部屋への階段を上がる。

「そういえば、あなた、何の用事で希望の家に?」

「ああ、私は羽塚さんに遊びに連れていってというか、観光案内を頼もうかと思いまして。」

 希望ではなく、その同居人の羽塚さんに用事があるとは、なかなか珍しい人物だ。希望は、自分から同居してると言いそうにはないが、実際、私が希望と羽塚さんの同居を知ったのは、あの事件以来、早めに帰るようになった希望を、自宅まで飲みに誘いに行った時、羽塚さんが出てきたからで、あの時は本当にびっくりした。秘密にしていると言っても過言ではない同居を知っているということは、羽塚さんの親族かなにかなのだろうか?羽塚さん縁の人物とは、なかなかに興味深い。

「私、これから羽塚さんと同居人の希望を連れて、飲みに行く約束をしてたんだけど、あなたもいっしょにどうかしら?」

「ご一緒してもよろしいのですか?お友達といっしょに酒盛りだなんて初めてのことで、すごくうれしいです。」

 少し、無理な頼みかと思ったが、喜んで了承してくれた。
 美人の上に、性格もいい。
 もう完璧です、あなた。
 これで、希望にはぐらかされてきた、羽塚さんについて、知ることができると期待に胸を膨らませていた。

 そんなこんなで希望の部屋に到着。
 チャイムを押そうと手を伸ばした時、

「あ、あの…」

 遠慮がちに、しかし、好奇に満ちた声に呼び止められた。

「それ、押してみてよろしいでしょうか…?」

 それってチャイムのことだろうか?じっと視線を送ってるところから見て、間違いないようだ。
別に断る理由もないので、前を譲る。予想外の人物がいると希望も驚くだろうし。
 チャイムを初めて見るのかのように色んな角度から見回して、呼び鈴のある所へと、指をさし出し、身構える。

<ピンポーン♪><ピンポーン♪><ピンポーン♪>

 いきなりの三連打。
 しかし、返答はない。中に人がいるような気配はあるが、だれも出てこない。

「もう一度押してみたら?」

「はい、そうしてみます!」

<ピンポーン♪><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピンポ><ピーンポーン♪>

 チャイムを連打しだす。
 一心不乱にチャイムを連打する美女の姿は実にシュールだ。
 いつも自分がこんな風にチャイムを連打しているのを考えると、自分の行動を見直す必要があるなと考えさせられる。
 正直、これは……引く。

「別に連打はしなくていいと思うけど…?」

「あら、すいません…楽しくなってしまって…。」

 たしかに楽しかったりする。この楽しさがわかるとはなかなか高尚なお方に見える。
 それにしても、この美女はどこぞのお嬢様なのだろうか?さっきからどこか浮世離れした雰囲気がある。普通の人間なら経験してそうなことを、珍しいや、初めてだと言うし、いわゆる箱入り娘なのだろうか?
 この美女がお嬢様だとしたら、その家族である羽塚さんも金持ちってことになる。
 玉の輿とは抜け目ない女ね…希望。

 はいはーい!と声が聞こえ、足音が近づいてくる。やがてドアが開き、この家の主が顔を出す。

「あんたうっさいのよ…。あと取り込み中だからもう少し待ってく… れ…?」

 思惑通り、予想外の人物に驚いているようだった。
 仲がよろしいようで、美女、縁の人物である羽塚さんはどういうわけかヘッドロックを極められ、顔が見えない状態。

「えーっと…どちらさまで?」

 というか、希望さん。あなたのない胸が当たってないでぃすか?
 ご親族の前でそんなはしたない姿をお見せしてよろしいんですの?オホホホホ。
 といった展開に持っていき、慌てる希望に楽しませてもらうことを期待していたが、

「羽塚の妻です。」

 それ以上におもしろい展開になってくれたようだ。

 まさかの美女の正体には、私も驚いたが、それ以上に、希望は驚いたようだ。
 口をポカンと開け、思考が完全停止してる顔だった。

 その顔は…

 とてもおもしろかった。

 希望は考えることを否定したのか、一度開けたドアを閉め、引っ込む。

 ダメだ、このまま逃がしてなるものか!
 まったく、こいつに関わるとおもしろいことになって、たまらない!
 追い討ちをかけようと、私はドアに手をかけるのだった。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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