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CrossConnection 03-01

CC
06 /03 2016
 忘れた
 失くした
 奪われた

  ◇
 隙を見て、包囲網から抜け出し、街中を隠れるように移動する。その道中、ナインは想う。
 勤勉ないい騎士になった。
 自身の窮地に駆けつけた若き騎士達を見て、ナインは素直にそう思った。
 蒼の輝石を埋めた剣を扱うゼブランスと紅の輝石を埋めた剣を扱うティマ。
 蒼の輝石は水を操り、紅の輝石は炎を操る。ゼブランスは水の疎密を操るのに長け、ティマは定点に炎を発生させるのに長ける。それぞれ得意な属性を持ち、特性を持つ。
 ゼブランスとティマは、二人でのコンビネーション戦法を得意とする。対話兵装の能力を組み合わせ、互いの能力を活かし合い、相乗効果を生む。
 最初にゼブランスが水に疎の力を加え、自身を中心とし、周囲に霧を展開する。霧は敵の視界を奪うと共に、敵の位置を把握するのに利用する。力の及んだその霧は、対話兵装の使用者に周囲の情報を伝えることができるのだ。
 ゼブランスが得た情報を今度はティマに伝える。その情報を元にティマは炎を発生させる。それで二人の一方的な鎮圧は完成する。
 単純に見えて、実際に実行しようとすると難しい。
 ゼブランスが対話兵装により、得られる情報はあくまで主観的なもの。人に伝えるのには、正確な情報を言葉に落とさなければならない。それに敵は動く。情報を伝えるのが遅れれば、攻撃は空振りに終わる。
 だが、ゼブランスにとって情報を伝える相手がティマであればその一連がほとんど省略できる。
 ゼブランスとティマは騎士になる前から共に過ごしてきた。その付き合い故に少ない言葉、感覚でも伝わるものがある。また、ゼブランスはティマの呼吸も心得ている。炎の定点発生には、集中力を要する。その
ティマの「間」をゼブランスは把握していた。
 こうして、ゼブランスの指示でティマは的確に攻撃を加えることができる。

 先程の戦闘での制圧速度はかなりのものだった。
 敵が怯んだところへの追撃もうまく決まっていた。そしてなにより、
 ーーー人々を守ることを優先した。
 騎士は人を背負い、人を守る。精錬潔癖であり、誇れるものでなければならない。
 その役割をあの二人は立派に果たしていた。
 ……まったく、助けられる日が来るとはな。
 でも、正直助かった。
 相手が対話兵装持ち、しかも多勢だとは想定していなかった。アレクシアからの連戦ということもあり、武器のストックも減っていた。あのままだと。
 ーーー手段が選べなくなっていた。

  ◇
「ナイン、どこへいくの?」
 感情のないノアの声が闇夜に響く。
 もうすっかり日は沈んでしまった。にも関わらず、街は騒がしかった。赤髪の対話者広めた炎で小火が起こっていたのだ。それを背にナインは目的の場へと向かう。
「補充だ」

 建物の戸をナインは勢いよく開ける。
「おやっさん、投擲用ナイフを2ダースくれ」
 ナインが向かった先は自身の住む家、武器屋『アイアンフェロー』だった。
「おう、えらく気前がいいな」
 店子の注文を聞き、店主は店の売り物から適当に注文の品を拾い上げる。
「ほらよ」
 6本ずつまとまった投擲用ナイフを布に包み、店の中に入ったナインへと放って投げた。
「ありがとよ」
 そこで店主はナインの背後に立つ少女の存在に気づく。
「……おやっさん?」
 固まっていた。
 自身の見ているものが信じられないとでもいったような様子。
「おい、その子は……?」
「ああ、依頼人だよ」
 普段絶対に見せることのない驚きに満ちた表情。
「全く変な依頼人だよ。具体的になにをすればいいのかわかんねぇときた」
 その反応に戸惑いを覚えたナインは意図せず、おどけた様子を見せていた。
「……どうして、その子が……」
「あ?いや詳しくはしらねぇけど」
「……おまえ、覚えていないのか?」
「ーーーは?」
 ノアとは、この少女とは今日初めて会った。
「……忘れているのか?」
 ーーーそのはずだ。
「……忘れているのか、おれは?」
「あ、ああ……」
 ナインには10年前より以前の記憶がない。
 原因は聞かされていない。空虚感はあったが教えられなかったということは、知らなくていいことだと子供ながらに思ったのだ。子供というのは、移り変わりも早い。いつのまかにその空虚感すらも忘れていた。
「おやっさん、おれはこの子を知っているのか?」
「いや……そんなはずは……」
 店主は頭を振り、もう一度ノアの姿を見直す。
「この子……名前は?」
「ーーーノア」
 店主の問いかけに、ナインの背後にいたノア本人が答える。
「いや…、おれが口走った言葉をなぜかこの子が気に入ってよ。本当は名前とは思えない呼ばれ方をしていた」
「おまえが『ノア』と名付けたのか?」
「名付けたとかじゃねぇ!」
「どうして『ノア』にした?」
「は……?この子に触れた時になんか思い浮かんだんだよ……『ノア』って言葉が……」
 自身でもよくわからずに発した言葉の意図を問い詰められ、ナインは言い淀む。その様子を見て店主は、
「ははっ…はーっはっはっは!!!」
 ーーー唐突に笑い出した。
「無意識にか!?そうか!はーはっはっはっは!!!」
 その行為に戸惑うナインを尻目に、店主はノアの前へと進み出る。
 そして、ノアの頭を豪快に撫でる。されるがままノアは体を左右に揺らしていた。
 しばらくその状態が続き、
「ナイン!!」
 また唐突に、店主は男の名を呼ぶ。
「この子を、守れ」
 店主は告げる。
「あ、ああ……。言われなくてもわかってるよ、そういう契約になってる」
 更に、
「今度こそ、離すなよ……」
 そう告げた店主の言葉は、普段と違った。
「なんだってんだよ……」
 すっかり調子を狂わされ、ナインは今日何度目かわからないため息を吐いていた。
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コメント

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いつも楽しみにさせて頂いております。

物語が動き始めてきたわくわく感がとても良いです。

これからも楽しみにしてます!

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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