スポンサーサイト

スポンサー広告
-- /-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

CrossConnection 02-11

CC
02 /14 2016
 疾駆。
 赤髪の放つ炎を悉く躱し、距離を詰めていく。
 ナインは苦々しく思う。この不快で頭をかき乱すような声が、自身の助けになっている。
 背後のノアへと飛び火しないように、少し大きめの弧を描きながら接近する。
 ---対話兵装には、対話兵装による攻撃しか通じない。
 一般にはそう言われている。それは「加護」と呼ばれる対話兵装による自動防御があるからだ。事実、ナインが騎士団を辞めるきっかけとなった対話者には対話兵装以外の武器による攻撃が通じなかった。攻撃が対話者に到達する前に、その武器を為す鉄が溶けてしまうのだ。
 対話者が絶対的な強さを持つ一因にこの絶対防御能力がある。
 ナインは腰に収めた剣を引き抜く。
 その剣の刀身に輝石は埋まっていない。
 ならば、敵対話者に立ち向かっていく意味はあるのか?

 ナインは既に見極めていた。
 自身の持つ剣が敵対話者に届くと。

 「対話兵装には、対話兵装による攻撃しか通じない」
 それは畏怖を孕んだ兵士の間に伝わる言葉。
 対話兵装の力は強大である。しかし、その実、使いこなせているものは多くはない。
 相手の攻撃を迎撃せず、その力を無力化させる。それはアストラルの深淵に堕ちた特殊な者だけができる芸当だった。
 対話兵装を乱用は心を壊す。
 異次元の力を振えるものは同じく心を異次元に置く。アストラルの深淵に堕ちた者とは、有体に言えば、精神に異常をきたした者。まともに命令を聞けて、まともに考えられる者はほぼいない。
 ルマノと呼ばれた男にもその片鱗を感じられるが、まだその域に達していないと見える。
 それに、酒場で投げナイフを投擲した時、このルマノという男はそれを払った。払う理由があるのだ。

 ナインは確信を以って距離を詰めていく。
 自身の剣が届く間合いに到達し、素早く横薙ぎに払った。
「っざけんな!!クソがぁ!」
 身を引いて回避するだろうというナインの予想に反し、ルマノはその剣戟の下を抜けてきた。刃を薄皮一枚隔て潜り込むようにして回避し、その勢いのまま紅石の剣をナインの頭部目掛けて突き込んできた。再び得た対話兵装の怖気で、反撃を知覚することができたナインは辛うじてその突きを躱していた。
 剣を突き出すのと同時に炎が切っ先から放たれた。
 熱が身体の側面をちりちりと焼く。地面か壁に到達したのか、炎が広がりその灯がルマノ顔を照らし出した。
 ---その口元には、笑み。
 密着しすぎた体勢で剣を振るえず、ナインは身を引く。
 ---笑っているのか?
 やはり対話者かとナインは胸の中で毒づき、ノアの元まで後退する。
 あの赤髪を始めに片付けておきたかったが……
 取るべき手は複数あった。他の黒衣の男たちに仕掛けて、赤髪の攻撃に巻き込むのも一つの戦術。しかし、それは選ばなかった。
 ナインたちの周りでは、ルマノが放った炎が建物に飛び火し、燻り始めている。このまま戦闘を長引かせると被害が広がる。今はノアから依頼を受けている身であれど、ナインはこの街での仕事を生業としている。あまり被害が広がるのは快いものではない。
 先に赤髪に仕掛けたのは、間違いではないが良策でもなかった。仕留められそうな相手から仕留める。そうできなかった。この人数差のままだと、ノアを捕縛に走る者も現れるだろう。それを防ぐためにナインは常時警戒し、下がらざるを得ない。
 同じような突撃を繰り返せば、奇襲気味だった一度目と違い、黒衣の二人も動かずということにはならないだろう。先程の突撃の際に、ナインはノアを背にしないように位置取りをしていった。そうであれば、巻き添えの心配もない。迷わずノアを捕縛しに走るだろう。
 どうにも部が悪いな……
 ナインが考える間にも、ルマノは力を溜めるようにぶつぶつと言葉をつぶやきながら剣に炎を纏っていく。その集中を阻むため、ナインはナイフを投擲する。纏う炎が蠢き、層を厚くしてそれを受け止めた。対話兵装の精密操作。力を練り上げているようだ。
 待っていてもやられる、出て行ってもノアが捕縛される。
 その状況の中でナインはナイフを投擲し続けていた。
「ちくちくちくちく…っせぇなぁ!!」
 そう叫び、赤髪は剣を大きく振り上げる。それを合図にその体周囲に炎が螺旋状になり巻き上がる。
 防御に回っていた炎が攻撃に回る。それが放たれれば全て巻き込まれる。その気配を読み取っているのか、黒衣の男たちは距離を取り、傍観している。
 ここまで粘ったがもうこれ以上は誤魔化せない。それでもナインはその場から動かずにいた。それは、
 ---いるんだろう?
 待っていたのだ。

 その空間を満たしていたのは、炎だけではなかった。その周囲、その街路には白い靄が満たされていた。
「---『灯れ』」
 赤髪の外灯が燃え始める。
「あ?」
 その炎は赤髪が起こしたものではない。新しい紅が男に灯っていた。
「右奥5メートル、並んで二人」
「わかった……。『灯れ』!」
 続けて火が灯る。今度はノアを捕獲しようと構えていた黒衣の男たちにだった。
「ちぃっ!!」
 赤髪は纏っていた外套を引き剥がす。
「レッドが逃れて、後ろに二歩下がった。別に16メートル左後方。建物の陰だ」
「了解、ゼブくん。『灯れ』!!」
 再び、赤髪に火が灯る。同じタイミングで短い悲鳴が遠くの方で聞こえた。
「邪魔してんじゃ、ねぇぞ!!!」
 怒号とともに、赤髪が剣を振るう。身体に纏わりついていた炎が剣の方へ流れていった。
 自身を蝕む炎を、自身の操る炎で飲み込み、身体から引き剥がしたのだ。
「やはりそのくらいはやるか」
 次の瞬間、剣戟が赤髪を急襲する。ルマノは袈裟斬りに振り下ろされた剣から逃れるように身を引いていたが、剣先は浅く、その腕を捉えていた。
 ルマノを急襲したのはゼブランスだった。その身には、白の鎧を身に纏い、蒼の輝石が埋め込まれた剣を持っていた。
「先輩!大丈夫ですか?」
 続けて現れたのはティマ。ゼブランスと同じく白の鎧を身に纏い、両手に一本ずつ小ぶりの剣を持っている。右手の剣には紅の輝石が埋まっていた。
「そんなやつは放っておけ……。他の二人を警戒しろ」
 ゼブランスがルマノを警戒しながら、ティマに言い放つ。
 ルマノは腕を抑え、急襲した相手を見据え、睨みつける。
「やってくれたな……てめぇぇぇえ!!」
「……あんなやつぐらい、さっさと仕留めろよ雑魚が」
 ゼブランスはルマノに向き直り、深く構え直す。
 その間を新たな炎が走った。
「ルマノ様、こいつらは聖歌騎士団です。一旦引きましょう」
 黒衣の男の一人がルマノに近寄り告げる。
「ふざけんなよ……!!ここまでこけにされて引き下がれるか!?」
「……言い付けを忘れましたか?」
「……っ!!」
 ルマノは歯噛みする。ギリギリといった音が聞こえてきそうなほど。
「くそがっ!!引くぞ!!」
 葛藤の末、赤髪は決断した。身を翻し、撤退を開始する。
「逃がすか!」
「待ってゼブくん!!」
 追走しようとするゼブランスをティマが呼び止める。
「先に負傷者の救護と被害の拡大阻止だよ!」
 街中では、ルマノが撒き散らした炎で被害を受けた人、物があった。大きく火の手が上がっているところはまだないが、燻り始めの炎を放っておくわけにはいかない。
「……わかった」
 ゼブランスはティマの言葉を素直に受け入れ、追走を止めた。
「あっ、あとナイン先輩も後で少しお話を……って、先輩?」
 そう言って、ティマは辺りを見回すが、既にナインたちの姿はどこにもなかった。
「おい、ティマ!!あんなやつのことなんて放って、さっさと行くぞ!」
 ナインたちは一瞬の隙を見て、その場を離れていた。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。