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CrossConnection 02-08

CC
12 /07 2014
 ナインはノアを連れて酒場へと来ていた。
 酒場に来たのは、腹ごしらえのため。時間は既に夜だ。ナイン自身は仕事で得たパンを食していたが、ノアはどうかわからない。これまで逃げていたのなら食事の心配をするような余裕はなかったはずだ。
 店に入り、ナインは店内を見渡す。
 祭りの影響もあってか盛況なようで客が多い。良い具合に紛れ込めるだろう。
 …教官は、いないか。
 この酒場を選んだ理由のひとつ。騎士時代の恩師であるスパーソンに相談をすることができればとナインは思っていた。
 夕方、アレクシアに会いに行く前に酒場の話題が挙がっていたからあるいはと思ったが、既にいないようだ。
 …騎士団に何か情報が下りてきていないか聞けたらよかったのだが。
 仕方がないと思いつつ、そのまま空いた席がないか探す。
「ナインさんいらっしゃーい!」
 そうしていると、当の教官と武器屋店主が話題にしていた看板娘が声をかけてきた。
「二人だ。空いてるか?」
 看板娘リアは「そうですねー」と店内を見渡し、
「あちらの方でいかがですか?」
 と空いた席を手で示して見せる。
「ああ、構わない」
 入口から見えにくい位置であり、窓からも遠い。外から覗き見られることもないだろう。
 リアに会釈をし、席の方へと歩く。
 ナインが席に着いて一息つくと、ノアはそれに倣い正面の席についた。体は席に落ち着かせていたが、視線は辺りを巡らせっぱなしだ。
「ナイン、ここはなに?」
 どこにでもある一般的な酒場。
「何って酒場だよ。まあ酒は飲まないけどな。いかがわしい店にでも見えるか?」
「…いかがわしいってなに?」
 しまった、気を抜きすぎた。
「あーそれはだな…」
 ノアの視線はナインの答えを待っていた。いつものジト目ながら、正に期待の視線だった。ナインは視線をそらしながら、
「男と女が仲良くする感じのことだよ」
 ととりあえず適当に答えておく。
「私とナイン?」
「それも違うと思うが…まあ、それでいいさ…」
 あまり追求されるのもなと思い、半ばあきらめ気味にナインは答える。
 この娘は知らないことが多すぎる。色々なものに興味を持つ。できることならば、すべて答えてやりたいところだが。一方で言いにくい、教えにくいこともある。
 …あまり変なものに興味を持たれないようにしないとな。
「私とナインはいかがわしい関係…」
 間違って覚えられても後々厄介になる気がする。
 当の本人は自分と対面の男との関係を胸の中で反芻しているのだろうか。不穏なことをつぶやいている。それを阻害するため、声をかける。
「食べ物はこっちで決めるぞ、いいか?」
 ノアはナインに頷きを返す。この程度の日常会話は伝わるようだ。
 手を挙げ、ナインは店員を呼び注文を済ませる。その過程でノアがナインに倣い手を挙げていたが、ナインは気にしないことにした。

 ナインは入口の方に注意を向けながら、店にいる人間を視線だけでチェックしていく。トラヴィオン王都の人口は多く、交易や商売などで人の出入りも多い。店内には顔見知りの人間もいるがそればかりではない。こちらの姿を窺っているような怪しい人間はいないか、手早く目で確認していく。警戒を緩めない。
「おすすめメニュー…」
 声に気付き、ナインはノアに視線を向ける。壁の張り紙を見ており、そこに書いてある内容を声に出していたようだ。
「おまえ、文字が読めるのか?」
 ノアは問いかけにこくりと一度頷き、
「おすすめメニューじゃないの…?」
 ナインに対して首を傾げて少し不服そうな顔を見せる。頼んだのは貼り紙に書かれているおすすめメニューとは違った。ナインがたまにこの酒場で食事をする時に、いつも頼んでいるもの。値段の割りに量が多く味もよし。現在、おすすめに書かれている料理よりもおいしいだろうという自信はある。
「なんだ?おすすめメニューが食べたかったのか?」
 おすすめメニューと言っても、ここは酒場。書かれているメニューを見る限り、酒のつまみに『おすすめ』という意味で書かれているんだろうとナインは思いながら、ノアに問いかける。
「おすすめなら『おいしい』というのがわかると思って」
 その答えに、ナインは言葉に詰まる。間を空き、
「…それなら心配するな。さっき頼んだのはおれのおすすめだ。それで十分わかるさ」
 ノアは「本当?」と尋ね、ナインが頷きを返すのを見ると満足したように見える。
「話はしないの?」
「飯食ってからでいいだろ」
 ナインは静かに息をつく。
「わかった」
 ノアはまた周囲を見回し始める。
 …じっと見つめることで泥酔者の気に触れなければいいが。
 そう思いつつも窘めはしない。
 ノアの知ろうとする行為をナインには止められなかった。

「お待たせしましたー!」
 ナインが店の人間を粗方見渡したところで店員のリアが料理を運んできた。テーブルに置かれる料理にノアは興味津々といった様子。ナインの鼻にもいい香りが届く、次第に口内が涎で満たされていく。
「これがおれのおすすめするこの店自慢のナポリタンだ。まあ食ってみろよ」
 そう言ってナインはフォークを差し出す。ノアは差し出されたフォークを受け取り、ナポリタンなるものにフォークを差し込んだ。それを引き上げるとパスタがフォークにからまり、掬い上げられる。
 しかし、パスタは途切れず、大きなまとまりから離れない。戸惑うノアにナインはフォークを回すジェスチャーをしてみせる。それに倣いノアはフォークを回す。パスタがフォークに巻かれていく様子に合点がいったのか、ノアは器用に一口大にまとめ、口に頬張る。
 次の瞬間にノアの表情が若干緩んだ。
「どうだ?」
 その表情の変化を見たナインは、咀嚼を進めるノアに問いかける。
「おいしいだろう?」
 対し、ノアは数度頷きを返し、
「ふぉいひぃ」
 感想を告げた。
 満足したようでナインは少し安心していた。
 …感じ方は同じか。
 ノアは引き続きパスタを纏める作業に入っていたが、次第に纏めるのがまだるっこしくなったのか、口を近づけて、啜るように食べるようになっていた。
 その様子を眺めながら、ナインは自分の分のナポリタンを口に運ぶ。口に広がる香りと酸味に
「やっぱうめぇな…」
 と再度思っていた。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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