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CrossConnection 02-05

CC
07 /31 2014
 少女の問いかけにナインは応える。
「ああ、聞こえた」
 違和感がある。それでもはっきりとナインは応えていた。 
 助けを呼ぶ『声』は聞こえた。しかし、音として聞こえていたのか確証はない。
「呼んでいたのはおまえか?」
 返された問いかけに少女は戸惑ったのか、首を傾げて見せる。少し間を空け、
「呼んで…ない?」
 少女は否定の言葉を返した。
「は?」
 予想外の答えにナインは言葉を失う。だが、
「けど…『呼んだ』」
「どっちだよ…」
 意図の読み取れない答えにナインは嘆息した。

「…助ければいいのか?」
 ナインは少し呆れ気味に問う。
 どこか不思議な雰囲気を持つ少女だった。
 少女から反応は、大体一拍遅れで返ってくる。表情も最初の驚き以外は半眼から大して変化がない。感情が希薄であるように思える。
「助けてほしい…」
 冷静で静かな声。助けを求める言葉。ただ、その声には先程まで感じられていた切迫したものがなかった。
「逃げてきた」
 怯えているようにも見えない。
「なにからだ?」
 本当にあの『声』を発していた人物なのか?
 ナインの中に疑問が生じていた。
「…わからない」
 それでも、
「まあいいさ」
 ナインは右手を差し出す。
「助けを求めたんだろ?」
 それに対し、少女は静かに視線を上げ、ナインの瞳をじっと見つめる。そして、こくりと首を一度縦に振る。
「じゃあこい」
 ナインの呼びかけに少女は手を伸ばすことで応えた。しかし、
 ---その手がナインの手に触れた瞬間だった。

『---!--だ!!---!!!!!』

 ナインの意識の中を何かが駆け抜けた。
 痺れにも似た感覚。古い記憶を呼び起こされるような、強制的な覚醒にも似た刺激。
「---っ!?」
 一瞬、呼吸の仕方を忘れていた。
「---がっ、はっ!」
 その一瞬だけしか呼吸は途切れていないはずなのに、ナインの体が、脳が酸素を求めていた。凄まじい疲労感と脱力感が押し付けられる。酸素不足により、ふらつく頭を支えようとナインは左手で眼前を覆う。
「の…、…ノア…?」
 突然の感覚にナインの頭は混乱していた。自身が口走った言葉が何を意味しているのか?---わからない。
 ナインは大きく呼吸を繰り返す。意識して呼吸を繰り返していないと意識を繋ぎ止めることができない。
 十数度と、大きく呼吸を繰り返し、ようやく体と心が平静を持ち直す。
 気が付けば、少女がナインの右手を両手で握っていた。
 表情に大きな動きはないが、心なしか心配されているような視線をナインは感じた。
「…大丈夫?」
「ああ…問題ない」
 ナインは少女の手を強く引き、立ち上がるように促す。想定していたよりも少女の体は軽かった。立ち上がるのに勢いがついて、少女はふらつき、ナインの胸に抱き付くような形となっていた。
 眼前の頭髪はきめ細やかで美しく、咄嗟に支えた身体はか細く、そして恐ろしく冷たい。
「…悪い」
 謝罪の言葉に少女はナインの腕の中、首を横に振って答える。その際に首元にきらりと光るものが見えた。
 首枷。中心に宝石が埋まっているが、とても首飾りには見えない。
 それを見てナインは一つ思い出す。
「おまえ、対話兵装は持っているか?」
 少女はナインの瞳をしばらく見つめた後、首を横に振った。
「いや、特にどうってことはないんだ。気にしないでくれ」
 これまで聞こえていた『声』。
 対話兵装を使う時に聞こえていた『声』の感覚に近い。実現できるのかわからないが、対話兵装を介して助けを求めてきたという可能性。それを考えてみたが、どうやら見当違いだったようだ。
 気にはなるが、とりあえず余計な詮索はよそう。
 助けを求める少女に不安感を持たせてはならない。
 いつもとやることは変わらず、本来の仕事を全うするのだ。
「おれはこの街で用心棒をやっているナインっていうんだ。よろしく頼むよ」
 ナインの自己紹介に少女は首を傾げる。
「あなたもナンバー?」
 少女の問いかけ。意図がわからず、沈黙を過ごし、
「私はX番」
 少女は自身の番号を告げる。
 ナインは考える。
 番号で呼ばれていたのか?
 番号で呼ばれるとなると奴隷か?トラヴィオン王国内では奴隷制がなくなって長い。地方に行けば当制度が残っているところもあるが、そこから連れられてきたのか?
「そうだな…古い数え方で『9』と言う意味は確かにあるが、俺のは名前だな。おまえは?」
 少女は再び首を傾げる。
「名前がないのか?」
 長い沈黙。
 それが続いた後に少女は「あ」と口を開く。
 そして、次に
「ノア」
 先程、ナインが口走った言葉を紡いだ。
「いや…名前だぞ?」
 ナインの疑問に少女は頷きを返す。
「名前、うん。…ノア」
 そう言って、少女は柔らかく笑った。
 その微笑みを見て、ナインは言葉が詰まった。
 何も言っても仕方がないという呆れた感覚ではなく、なぜだか納得してしまったからだ。
「よろしく、ナイン」
 静かな声で、表情にも余り機微がなく、それでも、
 ---嬉しそうに。
 ノアという少女は、ナインに告げた。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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