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CrossConnection 02-04

CC
06 /26 2014
 あの鮮やかな景色を
 もう一度
 見たかった

  ◇
 その女は、強かった。
 落ちぶれているとは言え名家の出である。十分な戦闘訓練を受けていた。加え、素質も持ち合わせていた。瞬く間に目覚ましいまでの力を付け、これまで負けた経験の方が少ない。
 この騎士団に入団し、戦闘訓練として幾人かと対決をしてきた。まともに戦闘訓練を受けたことのない寄せ集めに負ける要素はない。
 生温い。
 女は焦れていた。こんな場所では自分を高めることができない。このままこの騎士団に居てよいのか、こんなところで我が家にかつての名声を取り戻すことができるのか。こんな---
 …気づけば空を仰いでいた。
 負けた。
 決定的に。
 
 ---ナイン。
 それが私を倒した男の名だった。

  ◇
「くそ…なんでおれが謝ってんだ…」
 ナインは息を切らしながら呟く。
 聖歌騎士団の訓練生時代に無敵を誇っていたアレクシアを唯一倒せたのは、ナインだけだった。
 ナインにとって、真面目で真っ直ぐなアレクシアの剣筋は簡単に捌けるものだった。更にその剣筋には、焦りがあった。
 圧倒的な勝利の後にナインは言った。『もっと肩の力抜けよ』と。次の瞬間にアレクシアはナインに向かって拳を振りかぶっていた。
「煌めきの騎士、か…」
 初代セプトウェイン家当代の通称。トラヴィオン王国の低迷期、西国よりの侵攻を優れた軍略と勇猛で食い止めた稀代の盟友。
 『煌めきの騎士』の功績によりセプトウェイン家はトラヴィオン王家に認められ、貴族としての位を与えられた。しかし、一代で築き上げた名声が落ちぶれるのは早かった。セプトウェイン家にかつての栄華はなく、現在は形式だけ列席されたその通り名前だけの貴族。
 その在り方にアレクシアは変えたいと思っていた。
 今のセプトウェイン家には力がない。現在の貴族階級を変えるだけの権力が。
 権力がなければ、発言も受け入れられない。現在の貴族の在り方に意見することができない。変えることができない。
 戦場において、率先して前線に出陣し、民衆の命を背負う。その覚悟が今の貴族にはない。
 納得がいかない。納得してはいけない。
 生まれを変えることはできない。だからこそ運命を受け入れる必要がある。
 それが責任だと考えているから。
 『煌めきの騎士』の再来となり、人々を導く。
「やるべきことがあるんだろう…おれになんか構ってんじゃねぇよ…」
 それがアレクシアの目指すもの。
 ナインの頭から血が垂れる。ナインはそれを乱雑に服の袖で拭い去った。
「…そういえば勝利報酬、利用してねぇな」
 傷口に熱を感じながら、割に合わないものだとナインは思っていた。

  ◇
 声のする方へ、ナインは向かっていた。
 長い時間走り続けているが、未だ足を止めることはない。声はまだ聞こえ続けていた。
 橙蹟の丘からは、大きく距離が離れている。
 ---不可解だ。
 距離が離れすぎている。風に乗って響いて来たとも思えない。声の響きが変わらないのだ。
 一体どこから?
 わからない。わからないが向かう足が止まることはなかった。
 気付いた時には、貴族街にまで到達していた。
 王都の深部である北西区画。ナインは仕事で数度しか訪れたことがない。
 日はすっかりと落ちており、街では街灯が灯っている。日が落ちたというのに、遠方では賑やかな喧騒が反響していた。下町では、式典から続き、祭りが行われているのだ。
 隣を走り抜けてきた時は、とても騒がしく感じたが、この場においては遠く響く程度でしかない。
 対照的に貴族街は静かだ。通りに人影もあまり見られない。
 そのどちらにあっても変わらず響き続ける音。

『助ケテ-----!!!』  

 一体なんなんだよ…この声は…。

 対話兵装を使う時に感じる感覚。
 どことなく似ている。
 しかし、決定的に違う何かがある。
 それが何なのかわからない。

 足を止める。
 目の前には、建物と建物の間の狭い路地。
 予感があった。
 この先に答えが、ある。

  ◇
 ナインは路地の前で足を止め、荒げた息を整える。
 口を閉じ、生唾を飲み込む。渇いた喉を潤すための行為の理由が混濁する。疲労によるものなのか、緊張によるものなのか。
「聞こえる…」
 緊張に反し、足は自然と前に出た。
 求めているのだ。
 歩を進める。通路は暗く、月明かりのみが頼り。その中を目を凝らし、先を窺いながらゆっくりと先に進む。
 何もないのか?
 路地が終わりに近づき、そう思いかけていたその時---
 唐突に何かが動いた。
 ナインは反射的にその方向を向く。
 通路の最奥右手には、建物の配置上なのか、窪まった空間が存在していた。そこには、
 
 ---月明かりに照らされ、少女が一人座りこんでいた。

 仄かに差し込む月明かりのような儚さ。
 少女は驚いたように目を見開き、来訪者を見つめていた。そして---

「『聞こえた』の?」

 静かにその声を発した。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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