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CrossConnection 02-03

CC
05 /07 2014
 アレクシアの剣がナインの頭に命中した。
 間には、ナインの剣が割り込まれている。アレクシアの剣をナインは剣で受けたが、気迫で押し込まれてしまった。致命傷にならない程度に威力は殺せたが、強い衝撃を受けた。その頭部への衝撃によって、ナインは脳震盪を起こし、意識を定められないでいる。
 朦朧とする意識の中でナインは鈍った思考を回す。
 ---おれはなぜここにいる?
 倒れかける身体を支えるため、伸ばす手には、剣を持っている。
 …勝負だ。
 自分の居場所を決めるための戦い。この戦いに負けたら、自分は騎士団に戻る約束だった。
 ---このまま倒れれば負ける。
 いいか。負けてしまっても。いつものように煙に巻けば…
 ---そういえばなんで、騎士団に戻りたくなかったんだっけ?

 『……テ---』

 そうか、声か。
 声が聞こえるんだ。

 激しい感情をぶつけてくる禍々しい声が嫌で。
 呑まれそうで怖くて。

 『助…テ----!』

 その声が…

 『助ケテ-----!!!』

 ---呼んだ。

  ◇
 倒れそうになった身体を踏みとどめる。
「助けに行く」
 呟きのような声。しかし、はっきりした声。
 その声を聞き、アレクシアは驚きの表情を見せる。
 持ち直したのか?
 確かな手応えは感じた。ナインを倒せたと思っていた。
 一度引いた剣を再び強く握り直す。
「…なにをだ?」
 唐突なナインの決意に女騎士は疑問を投げかける。
 何か意識を繋ぎ止めるだけの理由があったのか?
「…聞こえなかったか?」
 その言葉にアレクシアは何か察したのか、息を呑んだ。
 そして、すぐに鋭い眼光をナインへと向けた。
 ---何も聞こえていない。
「おれは行く」
 ナインは手を突き出し、アレクシアに剣を向ける。
「おまえを、倒す」

  ◇
 風が一層強く吹いた。
 アレクシアが踏み出す。横薙ぎに振るった剣をナインは身を引き、背を逸らしかわす。それと同時に下手からナイフを投擲した。
 その動作をアレクシアは見逃さず、頭をずらすことで避けた。
 これまでのナインの攻撃とは鋭さが違う。避けなければ致命傷になり得る。
 これこそがナイン本来の戦い方。
 守りの構えにあって、一瞬の隙も逃さず、瞬間的に攻撃に回ることができる変幻自在の戦闘スタイル。対峙した相手は、攻撃の切れ目を的確に突かれることで自身の行動が読まれているという錯覚を得る。
 ナインは背を逸らした状態から、そのまま後方へとバク転をし、距離を取った後、身を屈め、脇の草むらに突入した。
 追撃しようとアレクシアが動くが、タイミング合わせ、再びナイフが投擲される。アレクシアは辛うじてナイフを剣で弾くことができたが、追撃することは敵わなかった。
 アレクシアはその場で歩を止め、思考を巡らす。
 ---冷静になれ。ナインのペースに巻き込まれるな。
 ナインは動いている。その動きを追う。
 ナインが入った草むらは背が高く、身を屈めて移動するナインの姿をアレクシアは明確に視認することはできない。
 だが、移動時に踏み倒す草の動き、ざわめきから位置を特定することはできる。
 アレクシアは、草むらの動きを目で追いながら、草むらから下がり、距離を取る。自身の周りを覆う草むらを移動するナインを警戒する。距離が確保できていれば、ナイフの投擲、ナイン自らの突撃であってもこれだけの間があれば対応することができる。
 草の切れ目ごとにナインからの投擲が行われる。それを悉く、アレクシアは剣で弾いた。
「そんなもので私を倒せると思っているのか!?」
 ナインが投擲を繰り返しながら、アレクシアの周りを四分の一程回ったところでアレクシアが声をかける。
 警戒は必要ではあるものの、来るとわかっているナイフを弾くだけの技量をアレクシアは持っている。このままでは、対峙が続くだけで、進展はない。そのことはナインも承知しているはず。
 だが、ナインは宣言したのだ。アレクシアを倒すと。
「ああ、倒すさ」
 言葉に続けてナイフが投擲された。弾き落とすべくアレクシアは剣を構える。
 先程までと変わりはない。そう思っていたナイフが、唐突に煌く。
 ナイフに夕日が反射した。それだけのことではあるが、距離、タイミングと弾くにはアレクシアにとって最悪であった。身体も迎撃の体制に入っていて、避けるのは難しい。
 光が眩しくとも影は視認できる。目が焼ける感覚を得ながら、アレクシアは目を凝らす。
 弾いた。
 そして、すぐにアレクシアは体制を立て直す。
 この現象を計算尽くで行っているのなら、次の手も続けてくるはずだ。しかし、
 ---来ない。
 タイミングをずらされたことで、アレクシアの警戒が一瞬緩んだ。その瞬間、
 ---アレクシアの警戒外の方向からナインが飛び出した。
 アレクシアは虚を突かれ、反射的に剣を振るう。
「わかっている」
 咄嗟に振るわれた剣の下を潜り、前のめりの体制のまま、ナインはアレクシアを押し倒す。
 倒れた衝撃で揺れた視界が定まった時には既に、アレクシアの首元にナインのナイフが突き付けられていた。
 
 陽光の反射を狙った投擲は、注意力を奪うためだった。
 投擲により注意力を奪っている間に、ナインはこれまで移動してきた経路を引き返した。一度踏み倒した草むらならば、注意を払って移動すれば、大きな音は立たない。最後の投擲前まで、敢えて音を立て、移動していたのは、その位置に自分がいると印象付けるため。
 そして、予測外の方向からの奇襲。それによりアレクシアの対応を絞る。
 予測できる行動を御するのは容易い。ナインはそのまま文字通りアレクシアを倒した。

「おれの勝ちだ」
 ナインはアレクシアを組み伏せ、宣言する。
「………ない…」
 アレクシアは言葉を絞り出す。
「声など…聞こえないっ!!!」
 組み伏せられた体制のまま、ナインへ叫びをぶつける。叫んだ時の動きにより、突きつけたナイフの先がアレクシアの首の薄皮を刺した。血が一筋流れていた。
「聞こえるんだよ…」
 そう言って、ナインは立ち上がる。
「聞こえない!怖がるな!!私が守ると言っているだろう!!!」
「そういうわけにもいかねぇだろう…」
「私のっ、----っ…」
 アレクシアは、言葉を止める。この懇願は自身のプライド故に発せられない。
「呼ばれてるんだ。…行くわ」
 そう言い、手が届く範囲に落ちた投げナイフを手早く回収し、
「…ごめんな」
 一言残し、ナインは丘を後にしたのだった。

  ◇
 ナインが去った後もアレクシアは一人、仰向けのまま丘に残っていた。
 寝転がったまま、深く息を吐き、強く歯を噛み、そして、左腕で顔を覆う。
「私の声も…聞いてくれ…」
 先程言えなかった言葉を口に出す。声はか細く自分の声ではないようだった。
 その言葉を発し、女騎士の胸から感情が溢れた。
 悔恨、悲壮、嫉妬、虚無。

 日は既に落ちている。
 その闇の中に低い嗚咽の音は吸い込まれていった。
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コメント

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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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