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CrossConnection 02-02

CC
03 /24 2014
 一閃。
 アレクシアより繰り出された一撃は、ナインの腹部を捉えた。
 戦場において、幾多もの兵を両断してきた、その一撃を腹部に受け、ナインの身体は吹き飛んだ。
 命中したのは、両刃のロングソードの腹となっている部分。刃は立っておらず切断の効力はなかったが、遠心力を活かした金属の塊の一撃は、威力としては申し分ない。ナインが吹き飛ばされた距離から見ても、相当苛烈な一撃だったのが窺える。
「相変わらず…鋭い踏み込みだな」
 苛烈な鈍撃を食らってなお、ナインは余裕のある台詞を吐き、衣服の汚れを払いながら立ち上がる。その様子を、アレクシアは表情一つ変えずに眺めていた。
 先程の一閃が、腹部に当たる瞬間にナインは自身の意志で飛んでいた。
 衝撃を全て受け止めないように、剣の流れる方向へと、剣先に身体を乗せるようにして。
「これまで無視してきたのは悪かったと思っているが…、それにしてもいきなりこれはひどいんじゃないか?」
 ナインはアレクシアの一撃を予感していた。またそれを受けようとも考えていた。故に避けることができたのだが---
 まさか剣戟が飛んでくるとはな…
 正直、そこまでの攻撃を受けると予測はしていなかった。平手打ち、最悪、拳を固め殴られるぐらいと思っていた。
「シカトかよ…」
 ---相当怒っているようだな。
「抜け」
「おれはお前と話をしに来たんだが…」
「いいから抜け」
 アレクシアは即時の返答で、有無を言わさぬ体を見せる。ナインはやれやれと首を傾げていたが、次の瞬間。
 ---再びの剣戟がナインを襲う。
 二人の間に開いていた距離を一気に詰める。そこから刃が放たれる。
 気づいたらそこに刃がある感覚。地を奔る雷のような斬撃。
 それを寸でのところで身を引き、躱す。
 目の前を横薙ぎが通り過ぎる。先程と同様に刃は立てられていない。本気で殺しにかかってはいないようだ。だが、頭に金属の塊を受けて無事でいられるほど、人間は丈夫にできていない。そのことをアレクシアも理解しているはずだ。
 ナインが身を引いたのを追撃せず、アレクシアは再度、口を開く。
「賭けをしよう」
 『賭け』。堅実で、着実な騎士であるアレクシアに似合わない言葉だった。
「は?」
 ただ、使わない言葉ではなかった。
 過去に数度、ナインはアレクシアから発せられたその言葉を聞いたことがある。
「勝負だ」
 こいつがその言葉を使う時ってのは…
「私が勝ったら、おまえは騎士団にもどれ」
 ---何かを固く決意している時だ。
 三度目の剣戟。
 ナインはそれを受け止めた。今度は腰から剣を抜き、刃で以てだ。
「だから待てっての!なんだいきなり賭けって!?おれになんかメリットでもあんのか!?」
 ナインが剣を弾き、互いの間に距離が開く。
「おまえが勝ったら…」
 問いかけに答えようとしている。アレクシアは視線だけ横にやり、しばし沈黙をする。
「…なんでも言うことを聞いてやる」
 ---こいつ何も考えてなかったな。
 質問は受け付けないというように、アレクシアは半身を引き、剣を構える。
「おい!話を聞け!」
 踏み込み。それに反応してナインは防御の構えを取る。
「ならば聞かせろ!」
 雷鳴のような斬撃を受け止め、二人は鍔迫り合う。
「なぜ騎士団をやめた!?」

 続く、アレクシアの苛烈な打ち込みをナインは捌いていく。ただ、まともに受け止めていたら、ロングソードと小剣という武器の重量差により、あっという間に受けきれなくなってしまう。その作業は精神を削り取るものだ。
「怖くなったんだよ!重傷を受けてな!」
 その最中でナインは応える。
「戦いがか!?それならなぜおまえは未だ戦いを続けている!?」
 感情をぶつけてくるようなその戟と言葉を。
「用心棒をやっているらしいな!戦うことはあるだろう!?では、なぜ騎士団では駄目なのだ!?」
 ---受け流すように。
「今だって人を助けるために力を使っている!それじゃ駄目なのかよ!?」
 わかっている。
「力を持っているのなら大勢のために使え!それが力持つ者の責務だ!」
 言い訳のようだ。
「じゃあ身近に困ってる人がいてもほっとけっていうのかよ!?」
 隠しているからだ。
「そうは言っていない!大局を見ろと言っている!!」

 剣を振り払い、距離を置き、二人は互いに息を整える。
 打ち合いが始まってから、ナインは攻撃を受けてばかりで、攻勢に回れていない。それをさせないアレクシアの技量も理由ではあるが、もう一つの理由、ナイン自身に迷いが存在していることがある。
 話をする。その目的でアレクシアに会いにきた。
 感情の昂ぶっていない、落ち着いた中で伝えたいという気持ちもあるが、打ち合いの中にあっても伝えられないことはない。しかし---
 『声』のこと。
 対話兵装から聞こえる、その『声』のことを。伝えなければならない肝心な内容をナインは伝えられないでいた。

 ナインの迷いの中、アレクシアは荒い呼吸を飲み込み、静かに口を開く。
「なぜ…私の隣では駄目なのだ…」
 アレクシアは俯き、強く歯噛みする。
 想いが伝わらない歯痒さを堪えるように。自分から出てしまった言葉を戒めるように。
 しばしの沈黙の後、アレクシアは顔を上げ、ナインを真っ直ぐに見据える。その顔は今にも泣き出しそうなほど、悲しげだった。そして女騎士は再度、
 ---ナインへと踏み込む。

 『声』のことは言えない。
「そんなに私が嫌いか!?」
 この女騎士を迷わせてはならない。
「別にそんなこたねぇよ!」
 目的のために自らを犠牲にするこの女騎士を迷わせてはいけない。
「そうだろう!?そうじゃないなら…騎士団に戻ってこい!!再び私と肩を並べて戦ってくれ!おまえなら…いや、おまえしかいないんだ!!」
 だからこそ。
「私を---避けるなぁ!!」
 ---『声』のことを伝えなければならないと思った。

 叫びと共に振るわれたアレクシアの剣が。
 ---ナインの頭部に命中した。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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