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CrossConnection 02-01

CC
01 /07 2014
 その声は
 始まりでもあり
 終わりでもあった

  ◇
 トラヴィオン城のある謁見室にて、一つの会合が行われていた。
 一対一で対峙するのは、一人の男と女。
 男の方は白い長衣に片眼鏡を装着し、顔立ちに知性と精悍さを備えていた。
 女は全身を隠す黒の外套を身に纏っている。黒く艶やかな髪と合わせ、全身が黒の印象を与える。外套により口元までが隠れ、表情がはっきりと見られない。それでも隙間から覗かせる顔立ちは繊細で整っている。美女、そう呼ぶに相応しい美貌の持ち主だった。
「ご機嫌麗しゅうございます、陛下」
 女は片膝を付き、お辞儀をする。漆黒の姿に反し、優雅な仕草と透き通った声。
 その動作に対し、陛下と呼ばれた男は片手を出し、制止を促す。
「ここでの私はただの取引相手に過ぎない。変にかしこまらず、対等にいこう」
「心得ました」
 促され、漆黒の女は立ち上がる。
「ですが、スミロフト陛下はこの国の第三王子。最低限の礼は尽くさせていただきます」
 そう言って、女は軽く頭を下げる。第三王子は「まあ仕方ないか」と軽く笑う。
 一通りの挨拶が済んだ後、スミロフトは「それで」と切り出す。
「今日はどういう用向きかな?」
 片眼鏡を手で整え直し、そのレンズ越しに漆黒の女を見据える。
「あるモノを預かってほしいと思っております」
 預かるという言葉にスミロフトは怪訝な顔を浮かべる。それを意に介さず女は続ける。
「ただ置いておくだけというわけではございません。陛下の研究にお役立てください」
 研究という言葉を聞き、何かを察したようにスミロフトの表情が変わる。
「一つ条件が…」
 言われ、スミロフトはさりげなく、綻びかけていた口元を抑える。
「---壊すことのなきように」
 漆黒の女の言葉にスミロフトは、
「ははは、はっはっはっは!」
 声を出して笑い出した。
「それほどの価値があるものか!いいさ!引き受けてやるさ!」
「ありがとうございます」
 快諾の返事に漆黒の女は改めて礼をする。そのタイミングで---謁見室の扉にノック音が響いた。

「失礼いたします。スミロフト様よろしいでしょうか?」
 開かれた扉から姿を覗かせているのは、スミロフトの従者。漆黒の女も幾度か面識があり見覚えがあった。
 スミロフトは女の表情を伺い、それに女は頷きを返す。合わせ、スミロフトは従者に手で入れと指示をした。
「修道士様のお連れの方がお見えになっています。緊急でお話したいことがあるとのことです」
「私にですか?」
 漆黒の女の表情が動く。その一瞬の機微をスミロフトは珍しいと思いながら見取っていた。
 この部屋に入ってから一度もこの漆黒の女の表情は変わっていなかったのだ。
「ふむ、少しよろしいでしょうか?陛下」
 スミロフトはどうぞと軽く促した。だが、内心ではこの漆黒の女の表情を動かすことになった事柄に興味が尽きず、自身が知りたいという想いが強かった。
 既に伝言を伝えにきた人間は扉の前まで通されていた。部屋に招き入れられた連絡係の者は、漆黒の女に耳打ちをする。その姿は女と同様に黒の外套を身に纏い、更にフードを目深にかぶっていた。まるっきり表情を読み取ることはできなかったが、慌てている雰囲気をスミロフトは感じ取った。
 伝言を聞き終えた女は伝言を伝えに来た人間を下がらせる。
 そして、スミロフトに向き直り、膝を折り、頭を伏せる。
「申し訳ございません、陛下。私の不届き故、取引に出すモノに逃げられてしまいました。引き渡しに少々の時間をいただくことになります」
 漆黒の女の表情は頭を下げていて窺うことができない。---スミロフトは想像する。
 有事であれ、この女は恐ろしく冷静だ。
 いつものように普段と変わらない表情をしているのだろう。
「私の研究に役立つモノが逃げるのか。益々興味が湧いてきたよ。私の元に連れてこられるのだろうね?」
「はい、お約束いたします…。ただ捕獲に際しまして、お膝元を騒がしてしまう可能性がございます。何卒ご容赦の程をお願いいたします」
「いいさ。その時は君らの立ち回りを楽しませて見させてもらうよ。ついでに動きやすいように色々と手を回しておくとしよう」
「…ありがとうございます」

 もう一度深く頭を下げ、漆黒の女はスミロフトに背を向け、謁見室を後にする。
 一人、外へと通ずる廊下を歩きながら---、
「おまえにそのような意思があるとは知らなかったよ、X番」
 修道士アビス=セクスアウラは、外套の下に抑えきれぬ笑みを浮かべながら呟いた。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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