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CrossConnection 01-02

CC
05 /01 2013
 聞こえるのは
 現実か
 それとも
 虚構か

   ◇
 日が昇り切り数時間が経つ。昼下がりの午後、男は目を覚ました。
 覚醒しきれない眼を擦りながら今が何時であるかを確かめるため、首をもたげ膝を立て、窓の外を伺う。
 簡素な木造ベッドの上から覗ける窓枠には、乱立する家屋とその中心に一際大きな建造物が切り取られていた。
 その建造物の名はトラヴィオン城。二百二十年の歴史を誇る大国家、トラヴィオン王国の居城であった。
 自身の住んでいる国家の城を視界に入れ、男は無意識のうちに罰が悪そうな顔を浮かべていた。毎朝この窓から見ることになるこの風景を、男は嫌っていた。後ろめたさを胸に残していたのだ。
 そんな自分自身への嫌悪を誤魔化すように、男は目頭を押さえながら大きく息を吐く。数秒の間を置いて、男は身体に包まっていた薄布を一気に引き払い身を起こす。再び身を倒したくなる誘惑を堪え、ベッド下に置いてある靴を履き、立ち上がった。
 男の眠っていた薄暗い部屋は物置になっており、足の踏み場がないぐらいに荷物が散乱していた。光は窓から差し込むものしかない中、男は寝起きでたどたどしい歩調で歩く。そのような状態にありながら、積み上げられた荷物の間をぶつかることなく緩やかに抜け、部屋の角にある階段を下る。
 降りた先の広間では剣や槍、斧と様々な武器が所狭しと陳列されていた。
「よう、お目覚めか。昨日は随分遅かったようだな」
 階段を下りるや男に声がかかる。声の主はカウンターと呼ぶには粗末な台を前にし、火の粉避けのエプロンをした筋骨隆々とした浅黒い男。ここトラヴィオン王国城下で営業する武器屋『アイアンフェロー』の店主だ。
「おはよう、おやっさん。夜遅いだけで楽な仕事だったよ。こんなんじゃ腕が鈍っちまう」
 店主から投げ渡されるパンを受け取りながら男は溜息を吐く。
「難儀なことだな。楽に金を稼げていいじゃねぇか」
 そういう問題じゃないんだよ。と言い、男はパンを頬張った。

「おれが不在の間、何か依頼はなかったか?」
 店主と軽く話をしながらパンを食べ終え、男が自身の『仕事』について尋ねる。問いかけに対し、店主は笑いを作ってみせる。
 男が行う『仕事』は依頼が恒常的に来るものではない。日によっては何の依頼もないまま日没を迎えることもある。連日の依頼に日頃の仕事の成果故なのかと男は感動を得ていた。
「レドラのとこの屋根修理を手伝って欲しいとよ」
 期待の『仕事』内容とは異なるものに男は堪らず悪態をつく。
「あの親父…!便利屋じゃねぇって言ってんのによ!」
 店主はその悪態も聞き飽きたとばかりに、
「仕事を選べる立場か?おまえはおれの親友のガキだから、ここに住む家賃を払えとは言わないが食費ぐらい自分で稼いでもらうって約束だろう?」
 自分の置かれている現状を突き付けられ、男はなにも言えなくなる。やがて深い溜息を吐き、頭を振りながら応える。
「ああ、わかってるよ…」
「わかってんなら文句を言わずにさっさと行って来い。頼まれた時間、過ぎてんぞ」
「じゃあ起こせよ!」
「ああん?おれは見ての通り店番で忙しいんだよ。自分のことは自分でやれ」
 店番。そう言う店主はカウンター前の椅子に座ったまま、悠然と新聞を広げている。今の時間、店に客の姿は見つからない。
「そりゃ商売繁盛なこって!」
 皮肉たっぷりに男は言い、身を翻す。階段下に立てかけてあった装備一式を手に取り、外に向かって歩きながら素早く身に着ける。
 依頼であるからには確実にこなす。
 悪態をつきながらも男の中には求められる期待には応えたいという想いがあった。
「じゃあ行ってくる!」
「おう、行って来い」
 店の扉を出て、駆け出そうかという矢先---
「ナイン!」
 店主の声が店の中から響いた。ナインと呼ばれた男は足を止め、なんだよと振り返り、店の中を覗き込む。
「帰りにレドラのとこでパン買ってこい!あいつの焼くパンはうめえ」
「---わかったよ!」
 言われずともそうしよう思っていた。
 今日初めて意見があったなとナインは口元に笑みを浮かべ、目的地へと駆け出した。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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