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GoodLack 04-06

GoodLack
06 /07 2012
 嵐のような打ち合いから羽塚が弾き出される。吹き飛んだ身体は、受身を取ることをせず、空き缶のように地面を跳ねて転がった。
 倒れ伏した羽塚は意識が朦朧としているのか立ち上がろうと地面に腕を突き立てるもどうにもうまくいかないようだった。
 対して一騎は、身体をふらつかせながらも一歩ずつ確実に羽塚に迫っていた。倒れている羽塚に止めを刺すのだろう。
 羽塚が負けた。とても信じられない。でたらめにつよく、身体も頑丈。それでいて天界の超兵器まで持っている。私を守るっていつだって本気で、それを成し遂げてきた羽塚がだ。
 あの羽塚が…負けるわけないのに。
 けれども目の前で、戦って、傷ついて、そして今倒れている。
 一騎がそれだけ強いと言うのか?しかし、羽塚がただ強いだけの男に負けるとは思えない。
 この男にはあるのだ。自分の大切な人を助けるという覚悟が。だからこそ、この男はこんなにもぼろぼろになっていても立っていられるのだろう。
 
 一騎は羽塚の前で歩みを止め、羽塚へと木刀の切っ先を構える。
 気づけば、私はその間に割って入っていた。
「待って!」
 切っ先は私のすぐ目の前。額に触れるか触れないかの位置でピタリと止まっていた。
「どけ…。どかなければおまえを先に殺すことになる。羽塚の意地を無駄にはするな…」
「どかない!」
 鋭い眼光で一騎は私を睨み付ける。
「私は…あなたにもう止まって欲しい…」
 だが、私は引かない。引くわけにはいかない。
「命乞いか?受け入れることはできんな」
「違う!命乞いなんかじゃない…。あなたは…止まるべきなのよ…。入鹿のためにも…ここで止まるべきよ!」
 一騎の顔が強張る。この男はどうして。入鹿のために目的をなそうと言うのに、その名前が出てくると途端に痛みを耐えるように表情を強張らせるのか?
「あなたは入鹿のために自分の手を汚してきたかもしれない…。そしてまたその手を汚そうとしてる。けどそのことを本当に入鹿が求めていると思ってるの?」
 男は自覚している。間違ったことをしていると。だからこそ自分の感情を抑えるように眉間に皺を寄せる。張り詰めていなければならない。でなければ決意が揺らぐ。想い人のために、その間違った行動ですら貫き通さなければならないと信じ込む。
「入鹿は絶対悲しむわ!いっしょにいたのは数日だったけれどもわかっちゃうのよ…。あの子はすごくいい子。純真でとても優しい。それに考えてもみなさい?仮に私が神様になったとしても、あの子はそうしてしまった責任を感じるはず。私に負担をかけないために…より一生懸命になって職務をこなすわ。自分のことよりも他人を優先してる。だからあんなにも身の回りのことを知らないでいるんでしょう?あなたならあの子のこともっとわかっているんでしょう…?入鹿のことをそんなに想っていて、救おうと思っているんだから…」

 二人の間に沈黙が流れる。数秒経って、静寂を嫌うように一騎が言葉を紡ぐ。
「わかっている…」
 目を伏せ、自身に言い聞かせるように。
「だが、だからこそなのだ…。おれは…止まれん…」
 その言葉、表情に私は言いようもない苛立ちを感じていた。
 どうにも頑固で自分の意地を曲げることができない。
 似ているんだ。
 このとてつもない不器用さが。
 つい先ほどまで、羽塚に言いたいことも満足に言えなかった私に。

「馬鹿じゃないの!?勝手に思い込んで、勝手に行動して!あの子を悲しませるだけじゃない!それなのにどうして…」
 どうしてと問うも、それがなぜなのかわかってしまう。こんな自分がとても嫌いなのだ。
「いいかげんにしろ!」
 叫び、息を切らす。
 なぜ私は一騎に説教なんてしているのか。一騎に言いたい言葉なのか、自分自身に言いたい言葉なのかひどく曖昧だ。

 一騎は入鹿のことを現状から救ってあげたくて、私を殺す。でもこんな方法を入鹿は認めないだろう。
 大切に思って、その人のためになると信じて、勝手に私たちは行動する。ひどい押し付けの愛情。そんなこと本当はしたくない。
「勝手なことして!大切な人を困らせて!余計なこと…すんな!遠くでこそこそやってないで、近くで支えればいいじゃない!特別なことはいらない。いっしょにいて、大切だって言うだけでいい!」
 そうなってしまう気持ちは痛いほどわかる。しかし、それではだめだ。独りよがりでいては。
 相手のことを本当に想っているならば、それをきちんと伝えてほしい。
「あなたは…入鹿のことがとても大切なんでしょ?素直にそれを伝えて…あの子を近くで支えてあげてよ…?」
 大切なのだから。双方想いあえる形を取って欲しい。
 
 一騎はゆっくりと顔を上げ、私の瞳を見据えた。しかし、その瞳は無理矢理に感情を殺しているようでとても物悲しいものだった。
「おれの意思なんざどうだっていい。おれはもう手を汚してしまっている。だからあの子の側にいることは…できない。あの子の、三橋様の幸せにおれは邪魔だ…」
 なんて頑固なんだ。でもその気持ちも私はわかってしまっていた。
「鐘ヶ江希望」
 私に突きつけた木刀を持つ腕に力が篭る。
「あの子のために死んでくれ」
 これからあの腕を引き、私を貫くのだろう。

 可哀想だ。もう少し素直になれれば、別のやり方もあったはずなのに…。なんて不器用なんだろう。間違っているってわかってても、それを認めたくなくて意地になる。
 私もいつもそうだった。
「一騎さん」
 次があるならば。
 羽塚と話をする時、もう少し素直になるように努力しよう。
 殺される直前にこんなこと思ってても仕方がないか…。
 そうだなぁ…。この騒動が終わって、もし生きていたならば。

「人を愛するのって素敵なことよね…」
 
 羽塚に大好きだってことを伝えよう。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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