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GoodLack 04-05

GoodLack
05 /07 2012
「ぐぅ…っ!?」
 一騎の振るう木刀を腕で受け止め、衝撃を殺せず体ごと飛ばされる。『希望ノ羽』で強化はしてあるが、それは相手も同じ。ガードをする腕が押し負けると感じ、後ろに飛び退いたのでほとんどダメージはない。
 しかし…。やはりこの男は強敵。さっきまでの雑魚とは違う。先刻の遊園地での敗北は不意打ちに『希望ノ羽』を使われたから。そう思う気持ちがあった。勝ちを確信しての一撃には、油断があった。だからこそ効果を発揮し、決め手とされた。
 『希望ノ羽』を不意打ちに使うことはもうできない。なので今回は自ずと、両者ともに『希望ノ羽』を最初から全快に起動した上での戦闘となった。『希望ノ羽』での技量比べならば自分に一日の長がある。元々の技量を加味した上でも対等、もしくはそれ以上に戦えると思っていた。経験不足を『希望ノ羽』を以って上回ることができる。思い違いだった。
 『希望ノ羽』を起動している今でもこの男よりも自分は劣っている。その現実を再度叩きつけられ、焦りとなって頬を伝う。再度一騎の方へと構えを取りながら、ちらりと希望さんに視線を送る。心配そうな表情でこちらを見つめていた。
 負けられない。勝算はない。それでもやらなければならない。
 再び、飛び込む。
 『希望ノ羽』の力を利用して一気に距離を詰める。
 一騎はその場で受け止めるべく構え、自分が間合いに入るのを狙い前面を木刀で凪ぐ。その瞬間『希望ノ羽』で下方向へ制動をかける。膝を、身体を折り、凪払いの下を抜ける。そのまま地面に手を突き、身体を捻り足を垂直に突き上げる。下からの急襲に反応し、今度は一騎が『希望ノ羽』を使い後退する。
 逃がさない。追随すべく突き上げた足を振り、腕を軸に回転し一騎の足をかける。後退するはずだった身体を足だけ止められ、一騎は体勢を崩す。この機会を逃す手はない。回転の軸にした腕を曲げ、地面を跳ね、身体を飛ばし、一騎の上を押さえる。
 そのまま腕を振り絞り、空中から一騎の顔面へと拳を振り下ろす。拳が命中する直前に一騎が顔と拳の間に木刀を滑り込ませるのが見えたが構わず振り切り、地面に叩きつけた。衝撃で床が砕け、一騎の身体が沈んだ。
 着地と共に口から大きく息を吐く。緊迫した攻防の中で息をつく余裕もない。
 うまく行った。いける。相手が戦闘の経験値で上回っているのなら、経験したことのない攻撃を加えればいい。上下左右とあらゆる方向からの攻撃。『希望ノ羽』を以ってすればそれが可能になる。相手の予測のつかないような奇抜な攻撃パターン。それを考えて、考えて、考え抜け。
 負けるわけにはいかないのだ。どんな方法を使ってでも、この男を破る。希望さんを助けるために、是が非でもこの男を倒さなければならない。

 ガードの上からでも手応えはあった。拳を堅く握り締め、構えを取ったまま倒れた一騎の様子を窺う。
「くっ…いい攻撃じゃないか、効いたぞ…」
 辛そうに首を抑えながら、一騎は起き上がる。だが、口調にはまだ余裕が感じられた。ダメージを与えているのには違いない。しかし、決定打とはいかなかったようだ。
 ダメージの抜けないうちに畳み掛ける。再び、攻勢をかけようと身を屈めた時、
「待って!羽塚!」
 希望さんの声によって制止させられた。突然の制止にどうしたのかと希望さんの方を見ると、希望さんはまっすぐ一騎を見据えていた。
「あなたは…」
 その声に一騎は立ち上がる。
「どうして私を殺すの?」
 希望さんは今更なにを言うつもりなのだろうか。
「言っただろう。おまえには神になってもらう」
「ちがう!」
 一騎は自分を見据えていた視線を外し、希望さんを一瞥する。
「あなたはたぶん…たぶん人を平気で殺すような人じゃない。あなたの意志じゃなくて誰かの命令で仕方なくでしょ?だれか…大事な人のために…違う?」
 希望さんの問いかけに一騎は口をつぐんだまま答えない。
 たしかに自分にも思うところがあった。これまでで一騎は完全な悪人であるという雰囲気を感じさせない。遊園地の時だって、希望さんのことを気遣う発言をしていたし、つい先程だって人質を取った男を非道を言い、切り捨てていた。そう、非道に染まりきっていない。悪人を演じているように見える。根っこでは自身の正義を持っている。そんな印象がどうしても離れない。
「ねえ…あなたは入鹿のために戦っているんじゃないの…?」
 その一言で一騎の姿がぶれた。この行動は予測していた。瞬時に希望さんと一騎の間に入り、振り下ろされる木刀を腕で振り払った。
「どうなさったのですか?」
 これまで冷静そのもので対処してきた直情的な行動。小首をかしげて、らしくないなとでも言うように男の瞳を窺い、尋ねる。一騎は目を見開き、自分を睨んでいた。しかし、すぐに感情的な行動をした自分に気づき、深く息を吐き、身を翻す。その背中から瞬間的に膨張した殺気が発散されていくのを感じた。
「…三橋様の命ではない」
 一騎が呟く。
「三橋様が人を殺せなどと命令するものか…」
 希望さんは別に三橋様を疑って、この問いかけをしたわけではない。ただ、この男にとって三橋様は名前が出るだけでも動揺するに足る存在。
「おまえらが事の真相などに興味を持たなくともよい」
「あなたは本当は正義感の強い優しい人なんでしょう?どうして敢えて悪者で居ようとするの?」
「ここで終わりだ」
 もう話などしないと、終わりだと吐き捨てる。希望さんがなにか言いかけて口を噤む。男の雰囲気からか言葉には出せないようだ。
「希望さん…下がってください」
 後ろの希望さんに首を横に振り、説得は無理だと伝える。
 希望さんは悔しそうな表情をしていた。まったくなんてことだろう。この人は自分の命が狙われていると言うのに人の心配ばかりしている。自分の事をおいて他人のことばかり。なおさら守ってやらなければならないではないか。
「三橋様のためですよね?」
 一騎に問いかけるも予想通り答えはない。早くしろと言わんばかりに構えを取ったままピクリとも動かない。希望さんはできることならば和解したいと望んでいるようだが、自分は一騎と和解できるとは最初から思っていない。
 これほどまでに頑なで強固。そして不器用な意志は曲げられない。男って言うのはそういうものだ。それが大切な女性のためならばなおさらだ。
 自分は希望さんのため、一騎は三橋様のため。どちらがその意志を貫き通せるか、さあ比べるといこうじゃないか。

 次の攻防は長く続いた。有効打を数度与えたが、その都度あちらも的確にこちらの苦しいところを打ち据えてくる。幾度とない応酬を交わした。次第にその中で一騎に行動を読まれ始めているのを感じ始めた。実戦経験、地力の差なのだろうか、あらゆる攻撃法を思考したが、それが追いつかなくなる。加えて武器によるダメージの蓄積から動きが捉えられ始める。先程までは相手の打撃と引き換えにこちらも攻撃を加えることができていたが、それが届かなくなる。
 負けられない。想いは強くなる。しかし、裏腹に身体は動かなくなる一方だ。
 そのギャップが隙を生んだ。攻撃に入ろうと屈んだところに丁度木刀を合わせられた。頭への強い衝撃。これまでの攻撃は相手も体勢が不十分で受け止めることができていたが、今度のは充分に踏み込んでの一撃。自身の攻撃と一騎の攻撃が衝突する形、カウンターとして命中した。
 身体が飛んだ。その浮遊感と共に意識も軽く浮く。『希望ノ羽』による受身も展開できずに地面に転がり、そのまま力なく倒れこんだ。
 
 床の冷たく硬い感触が頬に当たっている。それに反して身体は熱い。打たれた手足が重い。意識が遠のき、身体から力が抜けていく。
 このまま…負けてしまうのか?
 だめだ。ここで倒れたままでいてはだめだ。
 早く立ち上がらなければ。立ってあいつを倒して、希望さんを。守らなければ。
 気持ちとは裏腹に身体は動かないまま。
「終わりだ…」
 遠くの方から荒い呼吸音と共に声が聞こえる。
「くっ…あぁっ…」
 地面を通して響く足音が近づく。辛うじて首をもたげる。息を大きく吐きながら近づいてくるその姿は足を半分引き摺っていた。お互いに満身創痍の状態である。
「負け…られるかぁ…」
 腕を必死に地面に突き立てる。しかし力が入らず、身体が持ち上がらない。
 この状態で攻撃を食らえば終わる。早く立ち上がれ。早く立ち上がって希望さんを守れ。身体に意志を込めるもそれは受け止められることなく、そのまま外へ抜けていく。自分自身に命令を下しているのにまるでその命令が他人へと向かうよう。
 一騎は真っ直ぐに自分を見据えまま近づき、やがて歩みを止めた。その距離は近いのか遠いのか朦朧としている意識の中にいて判断できない。一騎は木刀を持つ腕を引く。突き貫くのだ。木刀ではあるが『希望ノ羽』で強化された強度と速度で人間の身体であろうと貫くことができるだろう。
 とどめの一撃。それが正に繰り出されようとしている。
 このままでは負ける。いやだ。負けたら希望さんが。
 負けられない。守りたい。動け、動け。
 それでも身体は動かないまま。
「く…っそぉ……っ!」
 次の瞬間。
 目の前で。自分の目の前で。
 希望さんが貫かれた。
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崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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