ぐっどら① その2

ぐっどら①
04 /08 2011
その003c

否。できるわけがない。

眠気が一気にぶっ飛んだ。
私は突然の出来事に混乱して頭が真っ白になりかける。
それとは対照的に、男はその場に立ち尽くしたまま、なにも行動を起こそうとしない。
大丈夫だ、落ち着け。まずは状況確認をすることが第一だろう。

2DKの一人暮らしアパート。家具の間取りも、足の踏み場が限定されてしまっている床の散らかり具合も、無造作に積み上げられた本の塔も間違いなく我が家であることを主張している。
酔っ払って部屋を間違えたとかいうことではない。

では、なぜ我が家に素知らぬ男がいるのか?

昨日の夜に自分でこの男を家に連れ込んだのか?はたまた、酔った私を介抱してくれたとかで、そのままこの男を自宅に引き入れてしまったのか?否、警察に補導されてからはだれにも会った覚えがない。一人で自宅に帰ってきた。

ということは、やはり、
「あ、あなたなんなの?泥棒!?」
泥棒と言うことになる。
昨日戸締りはした覚えがあるのだが、ピッキング等の開錠技術で自ら鍵を開けて侵入してきたのかもしれない。

私の混乱とは他所に、その男は泥棒と呼ばれ、ぐっと眉根を寄せる。どういうわけか、その呼び名がよほど悲しかったのか、目端に少し涙を浮かべ、目頭を押さえて、ふるふると首を左右に振っている。
「泥棒とは失敬ですねー…。」
泥棒じゃない?じゃあ、実は知っている人だったのか?今の声も聞き覚えは…ん?あ、そういえば顔もどこかで見たことあるような…
って、んなわけあるかーい!
家の鍵をだれかに貸した覚えはないし、多少似ているところがあっても、万が一にもあの人ってことはない。

「じゃ、じゃああんた、なんなのよ!?」

泥棒と言うには、服の見た目も明るいし、あまり家屋への侵入に向いているものとも思えない。加えて、住人に見つかって、逃げもしないし、襲ってこようともしない。私の質問にも実に普通に答える。

「私ですね…」
泥棒ではない。状況的にも、また、なぜだか直感的にもそのように感じる。
だとすると、人の家に忍び込んでいったい何者なのだろうか?

「私は、天使です。」

と我が家への侵入者は、堂々と言い切った。
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ぐっどら① その1

ぐっどら①
03 /22 2011

その001
その002c

「私はついてない」

ジリリリリリリリリリリリリリリ・・・・・・

朝からけたたましい金属音を発してくれる。
毎朝毎朝、勤勉なものだ。たまには職務怠慢もしなさい。
カーテンの隙間から差し込む陽光を避けるように、顔を枕に埋めたまま、手探りで目覚ましを探し、慣れた感覚でスイッチを落とす。
「んん…っ」
昨日は自分が悪くもないミスで上司に怒られ、親友もとい悪友の悟子を付き合わせ、自棄酒をした。そんなにお酒に強くないのだが、飲まずにはいられないってやつで、悟子の制止も聞かず、飲みに飲んだ結果、べらべらに酔っ払って、一人で帰っていたら、お巡りさんに補導され、注意を受け、へとへとになって帰ってきた。
「さむっ…」
帰ってきたらそのまま服も着替えないで、ベッドにダイブ。いくら部屋の中とは言え、冬の初めに布団もろくに着ないで寝るのはいささか無理があったようだ。
「暖房、つけよ…」
目覚ましを止めた手とは逆の手で、フローリングを手探りで探す。床が冷たくて辛いのを堪えながら探すも一向に見つからない。しばらく探したところで、ベッドのまわりにないことを思い出した。なんだって昨日の私はそんなところに置いたのだろう。
「はぁ…もぅーなんなのよ…」
昨日の自分を呪いながら、眠い身体をベッドから引き上げる。
「朝からついてな…」
そう、私はついてない。
だから、別に仕事のミスを押し付けられたり、偶々警察に補導されたり、暖房のリモコンが遠くにあったとしても、少し愚痴るぐらいでいつものことだと、許容するだろう。
だがしかし、

「いっ?」

いつもの見慣れた自分の家に見知らぬ男が佇んでいた。

知らない男が家にいる。ということを私は許容できるものだろうか?

崎原 一研

エキゾチック:
外国の雰囲気・情緒のあるさま。異国的。
外国の人から見れば日本も外国。

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